詩人:鰐句 蘭丸 | [投票][編集] |
こんな夜中に
一番
不必要なもの
目を閉じていなければならない時に
微睡んでいなければならない時に
目に見えない物事や物音
確かめたくなってしまう好奇心に
興味が目覚めると
本当に
眠れなくなる
寝不足の結末は
あなたも知っているのでしょう
ウケケ(笑)
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眠れなくて
眠れなくて
寝床
枕の上をネズミ走る
ネズミ止まる
ネズミまた走る
目を瞑り
眠れなくて
眠れなくて
枕のそばでネズミ鳴く
ネズミ泣く
また鳴く
また走る
時々歩く
目を瞑っても
眠れない
目開けても
眠れない
馬鹿みたいな繰り返し
馬鹿みたいな繰り返し
仕方なく起きて
冷蔵庫からサイダー取り出す
グラスに氷カランカラン
寝床の横テーブル
ソファに腰掛け
ウィスキー半分
サイダー半分
眠れなくて
昨日と同じ事
昨日と同じ時間に
繰り返して
繰り返して
繰り返して
ネズミ泣く
ネズミ鳴く
ネズミ捕まる
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あの日僕は君に「サヨナラ」を誓った
「サヨナラ」を誓った僕は泣いていた
この気持ちは君にも伝えない
誰にも伝えない
僕は君に「サヨナラ」を誓いながら
僕は僕に「サヨナラ」を誓った
「サヨナラ」って
なんてカンタンでカナシイ言葉なんだ
「サヨナラ」君
「サヨナラ」僕
「サヨナラ」
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少年の前には轍がある
少年の父のトラクターの通った跡だ
少年の父は農夫だった
少年の父は数ヶ月前に農薬を飲み自殺した
長く鬱に苦しんでいたという
少年の父のトラクターを操作し作業機を装着する俺を見て少年は
「じょうずじょうず」と小さな手を打って無邪気にはしゃいでいる
少年の母が
「この子も機械が好きみたいで」
少年を優しい目で見ながら明るく言った
少年の家に必然的に存在した少年の父と
父の遺したトラクターと機械たち
少年の父の思い出の一つである農作業機を俺はトラックに積み込んで
少年に
「バイバイ」と言う
少年も俺に
「バイバイ」
作業機に
「バイバイ」
少年の前には轍がある
少年の目の前を去る父の作業機を乗せたトラックの轍
父の思い出の轍
父のトラクターが好きだった少年
父が大好きだった少年
今も大好きなんだ
少年の前の轍は父の思い出の轍
少年は父の歩かなかった道に少年の轍を刻むだろう
強く
生きてゆけ少年
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おやすみ クロさん
いつか
僕もクロさんの居るところに行ったなら
教えてね
硬くなった真っ直ぐに伸ばした手で
何に触れたかったの
優しく開いた瞳で
何を見てたの
垂れ耳をツンと立てて
何を聞いてたの
いつか
いつか
教えてね
クロさん
今日は僕の使い古した作業着でおやすみ
朝までずっと一緒にいよう
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君は平成元年の春に生まれた
血統のよい利口な母をもち
四兄妹の末っ子として
生まれて間もない まだ胎盤をかぶったままの君を
今も瞼の裏に思い出すこともできる
利口な君の母は
胎盤を丁寧になめて取ってくれていたよ
まだ便を上手にできない君を
僕も君の母と手伝ってお尻をさすってあげたっけ
四兄妹
長男はホルスタイン模様の「ウシ」
次男は茶色系の毛並みの「チャイロ」
三男はクリクリ巻き毛のフワフワ毛並みの「クマ」
末っ子の君だけが女の子で真っ黒の垂れ耳 甘えん坊の「クロ」
兄たちは次から次に知らない人にもらわれて
「クロ」君だけが君の母とこの家に残ったね
いつか 君の母も永遠の眠りにつき
僕の母もこの世を去り
僕は君を支えてきたつもりで
君はしっかり僕を支えてくれていたよ
時には
僕のイライラのはけ口になって
君を怯えさせてしまっていたけど
次の日の朝は
ちゃんと僕の顔を見て声をかけてくれたね
退屈な時間の合間にお散歩に行き
追いかけっこ
かくれんぼ
楽しかったな
僕に新しい家族が出来て
息子のわがままにも耐えてくれたね
三輪車で体当たりされても
お昼寝時に砂まみれにされても
必要の無いメガネをかけさせられても
じぃ〜っとして相手してくれてたね
ありがとう
最近は僕や息子よりも走るスピードが遅くて
時々 倒れ込んでは
心配したんだよ
でも 気付いてた
もうすぐ お別れが近いんだなって
考えたくなかったけど
覚悟はしてたよ
今日はごめんね
君を見送ることできなくて
仕事が遅くなって
急いで帰ってきたんだよ
真っ直ぐ君のところにきたんだよ
君は硬くなって
動いてはくれなかった
声かけてくれなかった
ごめんね遅くなって
ごめんね
わが愛しのクロさん
十九年もの間
僕のそばにいてくれて ありがとう
そして
おやすみぃ
クロ
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今度だって思い出にできるさ
こないだも思い出にできたんだ
その前も思い出にできたし
その前の前も思い出にしてきた
ずっとずっと前も思い出になったんだから
今度もきっと
思い出にできるはずさ
サヨナラって言えば
思い出にできるはずなんだ