詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
あまりにもあっさりと
くずおれてしまったから
なにを失ったかさえわからずに
いや、
なにかを失ったということさえ
気づかないでいたボクたち
きのうの夕日の切なさとは違う
同じ太陽なのに
まるで生まれたてのようなすまし顔で
現れるあの朝日は
優しい最期を目指して
繰り返し
素敵になっていくきみに似ていて
ボクはまぶしくて目をつぶってた
きみのその強さがうらやましくて
ボクのわずかな強さを以て、
きみの弱さを補おうとすることを怠った
ほんの些細なすれちがい
出逢ったときから決まってた、
ボクらふたりが迎える最期。
新しい朝の光を浴びて
きみは今なにを感じてる?
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僕らには まだ
祈らなけりゃならないことが
いっぱいあるはずなんだ
さあ 手をつないでみよう
もしも今日、寝ているあいだに
ふたりのあいだを
ミサイルが通過したら
きみも僕も
引き裂かれてしまったことさえ
気づかずに死ぬんだろう
明日なんてものは
誰も持っちゃいない
ただ僕らは 好き勝手に
嬉しい予想 悲しい妄想
そんなものを繰り返して
ただ 今を生きているだけ
もしもいま、つながった僕らの手を
なにかの拍子にまっぷたつにされて
そのショックできみも僕も
お互いの名前さえ忘れてしまって
だけど、僕らの歴史の上では
それはほんのささいな出来事なんだよ
過去も未来も人間の
そうぞう物でしかない
僕らが手に入れたのは 確かな今
今 僕を包み込んでくれる
きみの愛こそが永遠を名乗るんだ
−過ぎゆく瞬間こそが
無常こそがわたしたちを生かす−
明日なんてものは
誰も待っちゃいない
ただ僕らは好き勝手に
輝かしくも 悲劇的な未来を
拒むようなそぶりをして
望んだままに 手に入れるんだ
詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
であわなければ
よかったのにねって
君が、最初に云った言葉の意味が
そのときの君の表情が、
今になって理解る
孤独の定義さえ知らずに
甘い恋の痛みに恋をしていた少女を
君は一体どんな気持ちで愛したのかな
わたしはただ窓を開けて
冬の風と 地球の丸さを感じる
半年前の君の声に耳を澄ます
必ず、帰っておいで
ずっと待ってるから
結婚しよう
わたしが、初めて君の前で泣いた夏
君が初めて、わたしの胸で泣いた冬
季節は1年ぶりで
どんなわたしたちでも
歓迎してくれるけど
離れていくときは振り返りもしないね
変わることは止められない
常に
君も、わたしの髪も
伸びつづけているように
詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
彼女に届けるなら
どんな歌がいいかな
凍りついた太陽の下で
ひとり 死んだ母さんを探して
片腕のとれたくまを抱いて
泣いている彼女に
夕焼けの感動を伝えるなら
どんな言葉が思い浮かぶだろう
愛や声さえも見ることのできる、
善や悪さえ混沌としている、
ただ全てを美しく映す瞳を持った
盲目のあなたに
僕を包む腕や
音楽や 憎悪や 凍える冬の
全てを感じなくなったとき
きっと 世界は僕を必要としない
僕は
安穏としたゆりかごから
逃げ出したくて
争いばかりな全ての人に
唐突に堕ちてくる幸せが羨ましくて
こんな僕さえ美しいと言う
あなたの柔らかい胸で眠りたくて
ただ
そのために、生まれてきたんだ
凍った太陽の下なら
光源は僕
言葉でしか伝えられない愛で
世界を愛したい
詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
とても小さな太陽
きみは、
ぼくの
お先真っ暗な
未来を
映し出してはくれないんだろう
暗闇に
溶けた
ぼくの姿を
世界に照らし出しては
くれないんだろう。
けれどもね
今、
遠ざかってゆく笑い声に
気づかないような
ふりをして
本当の孤独を
絵に描いたような孤独を
味わっているぼくにはね
どんなに
頼りなくても
たったひとつの太陽なんだ。
弱いきみがぼくを
強くしてくれるんだ
とても、
とても、小さな
愛しい太陽
詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
穏やかな君の呼吸音が
僕の孤独な時間を刻んでいる
空は藍色
零した生命はまた
悲しい輪廻の土の中産声を上げる
涙の流し方さえ
知らないと言って泣いた君
どうして涙が止まらないのか
わからないと言って笑う僕
穏やかな君の呼吸音と、
僕の孤独な時間を切り刻んだ
記憶は朱色
重ねた輪郭はまだ
幼い心しか持ち得ない僕には
美しすぎて 苦しかった
神は一体いつ終わりを告げるだろう
真っ赤な空に
透き通るような君の色を
忘れてしまったかのようなあの空に
詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
遠い未来から聴こえる
キミの声は
不思議なくらい懐かしい
生きた街の音に
かき消されながらも
必死にボクを呼んでいる
姿を変えていくすべてが
いとしくて かなしくて
手を伸ばすけど
ボクはもうキミに触れることも
できないよ
でもいつか必ずそこに行くから
ボクは弱いけど
弱虫なボクと戦う強さを
キミがくれたんだ
ほんのひと握りの勇気で
空を飛んで、時を越えて
ボクは大人になる
あのとき見た冒険の続きは
キミと並んで見るハッピーエンド、
こうして世界は繋がっていくよ
ボクたちの力で
キミにそっくりな
青い地球の物語を描こう
詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
1日の始まりに、今日は何をして、なんのために頑張ろうかって考えてみた。そしたらなんだか死にたくなった。わたしには守るべきものが何もないってことを思い出したから。
ベッドから這い出して、顔を洗って 歯磨きをして、わたしは死に場所を探した。途中でおなかがすいてパンを食べた。家の中に死に場所は見当たらなかった。
飼い猫は家の中で一番暖かい場所を知ってるんだ、自分が死ぬのに相応しい場所もきっと知っているんだろうな
わたしが死ぬのに相応しい場所は一体どこだろう
わたしは死に場所を探して旅に出た
人に迷惑をかけるような死に方は嫌。
死ぬなら誰にも気づかれないで 美しい自分のままで死にたいの、なんて
醜い自分の姿が写った曇りガラス越しに呟いたりしつつ
あたしは気づいたらあなたの家の前にいた
正確にはあなたが前に住んでいた家だから あなたはもう死んでしまって いないのだけど でもわたしはここまで来て他にすることがなかったからあなたの家のドアをノックした
そしたら予想通り いつもと変わらない無愛想なあなた
ドアを開けて私を見るなり優しい笑顔で
待ってたよ なんて「バカみたい。」
そうつぶやいたわたしは 差し伸べられたあなたの腕にすがって泣くしかなかったんだ
だって これ 夢でしょう
あなたは死んでしまったんだもの こんなに幸せな夢を見させるなんて、神さまなんて大ッキライ
なのにあなた 君は美しいね。なんてふざけて言う
じゃあわたしここで死ぬわって
わたしはあなたの口であたしの口をふさいで呼吸をやめた
こんなに幸せな死ってあるかしら
目が覚めたらあたし あなたの腕の中で泣いていた
悪い夢でも見たの? あなたが死ぬ夢を見たの 死ぬ、ってどんな感じかな あたしは幸せだった それじゃ、ふたりで死に場所を探す旅に出ないか?
僕たちが死ぬのに相応しい場所を
何年かかってもさ。
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空腹に満たされる、午前1時
わたしは目を開けてあなたの夢を見ます
またニキビが増えちゃうなって
思いながらチョコレートをかじるの
何万キロも離れた故郷の澄んだ空と
今、わたしの眼下に広がる、
濁った海はちょうど繋がっている。
果てしない数の銀河を思へば
ふたりを隔てる距離なんて下らないわ
そうでしょう、
暇だから鏡の中を覗いてみたら
知らない女が泣きべそをかいて
わたしを覗いていた
きっと首にできたニキビが
気に入らないんだと思うけれど
空腹に犯される、午後1時
わたしは目を開けてあなたの夢を見ます
詩人:いもけんぴ佐藤ロビンソン | [投票][編集] |
キミの夢を見ないように、
睡眠薬を飲んだ夜
死に絶えたはずの悲しみを
重い目蓋で閉じ込める。
あたしの右腕を彩る赤は
死へのあこがれ
それと 生きたい、と願った証
気づかないフリして、
通り過ぎてったキミの冷たい優しさも
気づかうフリをして
ほんとはすべてを奪っていった
あの子の意地も
こんなくすんだ空の下じゃ
まるで美しく見えてしまうね
離れていく景色が愛しい
来世があるなら
あたしはあたしを愛せるのかな
キミはキミのままでいて
くれるかな
なにも夢を見ないように、
睡眠薬を飲んだ夜
死に絶えたはずの幸せが
重い目蓋によみがえる。