詩人:虚空 | [投票][編集] |
夜行列車に乗って
君のいる街へ帰ろう
淋しいと言った君を
独りにしたくないから
利用されたっていい
都合のいい男でもいい
君が必要としてくれるなら
僕はいつでも
君のもとへ飛んで行くよ
だってこんなにも
君を愛しているから
淋しいのなら
辛いことがあったのなら
いつでも帰っておいで
君の指定席だった僕の右側は
今でも君のための席だから
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缶ビールを喉を鳴らしながら飲み
大袈裟に『ぷはぁ〜』と息をした
オヤジ臭いと笑う君の姿は
もうこの部屋にはない
煙草に火を付けて一服し
『煙草とビールは相性抜群』
と言った僕の言葉は
一人きりの部屋に
寂しく彷徨った
全てが静止した空間に
ただ煙草の煙が揺らめく
僕は一人
いや、違う
僕は独り
時間が止まった部屋に
ただ独り、たたずむ
僕はまた
喉を鳴らしながら
缶ビールという名の
孤独を飲み込んだ
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煙草を手に取り火をつけて
煙という名の盾を作る
人を寄せ付けない
自分だけの空間が
そこには広がる
ここだけが僕の時間
ここだけが僕の世界
誰にも邪魔をされない
時間の止まった世界
ニコチンが肺に溶けて
無駄な思考が消えていく
日常の細々した悩みから
唯一解き放たれる瞬間
無の時間
無の境地
しかし
この盾は
あまりにも脆く
あまりにも儚い
盾が消えた後の虚無感は
僕を地獄の果てへと
引きずり落としていく
結局逃げてるだけ
結局見てないだけ
いくら盾を纏おうと
それらを打ち破ることは
決して、ない
打ち破るのに必要なのは
盾ではなく矛なのだ
そんな事は解り切っている
だが、矛を持つ強さは
まだ自分にはない
そして僕はまた
煙草を手に取り火をつけて
煙という名の盾を纏い
自分の殻に籠るのだ
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月の見えない
夜空を見上げて
僕は気付いた
そうか
君が太陽で
僕は月なんだ
君は自ら輝けるけど
僕にはそれが出来ない
君の光を受けて
初めて輝けるんだ
君を失った僕に
光はもう届かなくて
誰にも見つけられず
ただ彷徨っている
誰か僕を見つけて
と
ただ呟きながら
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あの時君が言った
占いを僕はまだ信じてる
『今、あなたの側にいる人は
生涯大切な人です。』
嬉しそうに言った君を
僕はとても愛しく思った
この先の二人を
約束された気がして
僕も密かに
喜んだんだ
あの占いは
まだ有効かな?
僕は今でも
あの占いを信じてるよ
だから
辛くなったら
いつでも帰っておいで
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君の事を好きな気持ちは
付き合っていた時から
ずっと持っていたけど
不思議だね
君を失ってから
その気持ちは
さらに強く
さらに激しく
僕の中で
暴れ回っている
皮肉な事だけど
愛情を一番強く
激しく感じるのは
大切な人を
失った時なんだ
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風に運ばれて
キンモクセイが
ほのかに香った
どこから来たのかと
周りを見回しても
見つけられない
少し強い風が吹いた
葉のこすれる音に
空を見上げた
そこに
キンモクセイはいた
こんなに大きな
樹になるなんて
知らなかった僕は
自分の世界の狭さに
少し笑った
今まで僕の世界は
目線の高さだったんだと
初めて気付いた
でも
今は違う
だって
見上げた空は
こんなに広く
無限大だから
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吐き出した煙草の煙が
星空に溶けていった
煙の向こう側に
オリオン座がいた
そうか
もうそんな季節になったのか
下を向いて歩いていたから
僕は気付いてなかったよ
実家を離れて
一人暮らしをしていても
お前は毎年ちゃんと
顔を見せてくれるんだね
あの時見上げた星空と
全く同じ光景が
今、目の前に広がっている
そうか
この街と故郷は
繋がっていたんだ