詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
五月のかぜを渡るとき
遠いひかりは
よみがえる
あおたちの名の
車輪のなかで
一斉に
いま
みどりはかえる
日にかわる
かじかむばかりの
指だったのに
いつしか、
花かご
やがての雨を
かぞえることで
ゆめは、不足をせずに
持てるかぎりを
こぼれ始めて
ひとが、
きれいに、
時計塔を築きあげてゆく
とうに
過ぎ去った窓辺から、
あまりにも待ち過ぎた
街路樹、鉄橋、送電線、まで
日々の胸は
ふたつの腕に乗せて
鐘の鳴る重みを、
しかたのない吐息を、
ただ聴いている
受けとめて
いる
あやまりのすべてを
足早な季節のせいにして、
温もることに不慣れなままで、
波間になって
ゆく
割れながら、
なつかしい予感、を
たび重なる
愚かさ、を
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おもては
どこですか
みぎは
ひだりは
うらがわは
問いかけるほど
しずかになるから
物言わずには
いられない
すぐにも
あしたは来るけれど
ちいさな点は
さびしがり
きのうもそんな
十二時でした
まちがえることは
あたりまえであっても
正解では
ないもので
いまも
土星をかこんでいます
器用なゆがみの
うつくしい
だ円です
わらってください
あなたも
ひとつ
前でも
うしろでも
たくさんの
ゆびのなかの
あきらかな痛みだけ
どうにも苦手な
わたしです
数えるたびに
なぞられ、
て
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少年が落としてしまう、
それは
あまりに
優しいもので
いつまでも思い出は
少女のかげをしています
夢から覚めて
くちもとに
残るのは
あどけない運び、です
名前はもろくも
かたくなで、
呼ばれています
呼んでいます
かぼそい首の
うつむき、かたむき、
すべてのかぜと
宇宙にのって
あてにならない
かがやきを
いま、
広がりゆくのなら
閉じてゆくべきですか
そんな声すら
だれかの地図へと
消えてしまうけれど
ずっと、昔から
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みんな、猫です
首に
きれいな鈴を鳴らせて
どこが町でも
どれが月でも
慌てず
とまらず
つながります
眼のなかに
吸いこまれていった約束など
とうの昔のまろやかさ
いまさら
研がずとも良いではありませんか
耳ひとつ、
あるいは舌で
事足りるというのに
真っ黒な闇夜は
いつからか留守になり、
ふしぎな時計と
こんばんは
おぼえて
いましたか
気づいていますか
その菓子の
もともとのいろ
なくしていない、
鍵穴とろり
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それは
たやすい無限の
数、かたち
みつめることで
遠のいて
聴かないつもりが
響きあう
おおやけの園、
あかるいことも
暗がりも
おなじ
花
誰かのために
誰をも
えらばず
金貨は
そういうなかで
錆びてゆく
だから、光
それだけは
疑いようもないのに
疑わずにはいられない
さようなら、は
あと幾つ
水のなかの風
その向こう、
遙かな問いかけが
空なのかも知れない
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胸のうちにある
たしかな
金属は
この世でたったひとつの
かなしみです
生身であることを
証すための痛み、なら
どんな音色にも
そのゆびを
いとしさを
奏でるひとが
いてもいい
けれどもそれは通過点
やがては弾いて
傷になる
いつか
どこかで
なにかをかばう
途切れ途切れ、が
なめらかさ
嘘だとか
ほんとうだとか
そういうことではなく
ささやかな
すべての箱への
お返しに
夢のそとから
古い
軌道で
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涙から
とおいところばかり
数えていたら
行き止まりさえ
意味をなさなくなってしまう
天使のうたは
たいようだけのもの、ではない
雷雨はかならずしも
おそろしい顔をしていない
めぐり逢いたければ
包みこむこと
たやすい顔では叶わない
すべてに
すべて、と
満ちてゆくこと
崩れてゆくようにして、
つぎは
はじめて
つぎ、になる
押しても
流されても
おなじ尾のために
繰りかえされる
ものがたり
雨をすくっても
雲をえがいても
虹をのがれても
予感はこぼれる
素直なままを
それぞれに
ただ
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かけ足に過ぎなかった
いまでもそれは
よくみえる
ほろにがい
夕暮れの日を
燃え尽くすには
まだ早い
わからないほどに
からまり続けて
いるからね
忘れてしまおう
約束を
忘れてしまえるから、
泣いて
わらって
崩れてしまっても
かたちと呼ぼう
きっと
灼熱にただ
めぐられながら
いつかの背中も
案外近い
そんなふうにして世界は
やさしく
遠く
ほら、
夕焼けている
すすむ道にも
戻る道にも
あかあかと
また
夕焼けている
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ひたむきだから
汗をかく
それは
おろかであるかも知れないけれど
ふしあわせの向こうが
しあわせであったり
するもので
虹は
しずかに消えてゆく
あおぞらがきれい
夜のあとならば
にわか雨にも
息づける
うしなうものなど
ありえないよね
変わってゆくことはあるけれど
変わってしまうものといえば
たとえば瞳の角度、
だろうか
水面でありますように
いつまでも
いつまでも
ねがうことだけで水になれる
そんなふたりが
守られますように
きみだけの永遠は
ぼくだけの
天使
いつわりではなく、
まるで子どものようにして
ここにうたがあるよ
あおぞらがきれい
流されるほど、
いたみはやわらかに
ひかるもの
ぎこちなくても
涙にうまれて
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こたえ、という
ことばそのものは
とてもかよわいものです
だからといって
あきらめたりはせず
突きつけることもせず
こころは、そう
並んでいけたなら
じゅうぶんだと思います
幼い日々は
そうして歩いていたでしょう
大人になって
なかよくすることが
難しくなってしまったとしても
思い出すだけならば
間に合いませんか
まだ
こころは細くなります
仕方のないことに
うなずきながら
あなたのほんとうと
わたしも同じです
かたちは違っても
かたち、と声に出してみたならば
みんなそっくりそのままで
案外つながってしまいます
誰のためでもない探し物のように
ここがあって
そこがあって
それぞれが
約束をつづいてゆく
すてき過ぎると
わらえるのなら
生きて、
叶わなくても
ゆめの代わりに
とらわれてゆく哀しみを
どうすることもできない姿でも
生きて
どうか、
生きて