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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[859] ばいばい、がーる
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きみのバスが遠ざかり

ぼくはちぎれて

半分になる



照れくさいぼくを

きみが思い出すとき

薄闇はきっと匂うから


けなげに告げよう

離れた場所で

あすの名を



ゆずり合えば

わからなくなる

ささいなところで

ほんとうは許したい

のに



 こどもでごめんね


 お互いさまでも

 優しさのため



きっと

いつでも

誕生日のように

迎えにいける

ぼくだと

誓おう



 ばいばい、がーる


 ぼくはいつか、

 いつかの

 少年



もう少しなら

不器用でいいはずだから

涙について

物語でいよう


声にはならなくても

つたわるように


半分だけでも

その、わすれない手で

2008/01/16 (Wed)

[860] 金星雨
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えらばれた場所でだけ

かなう願いを


託して

しまいたい




分けられてなお

うつくしいものも

きっと、ある


降る雨の

そのずっと奥のほうで


飾りをえらばず

けれど飽きられず




均整な軌道に乗り

にげてゆくのは

自由かと


おもい過ごして

聞き役は

つのる




いっそ

崩れてみては、と

うながすものに


影をもとめて

こぼれ、はじめて




はるかにおもえる

わずらいを


すこし、でも

飲み干せたなら




なつかなくても

あまい匂いを

満ちていた




ことわるのではなく

支配のための糸車


もうすぐみえる

まもなく

渡る


2008/01/21 (Mon)

[861] わたしを離れない嘘たち
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わたしを

離れない嘘たちが、ある


それはかならずしも

苦しみではないゆえに

より果てしなく

むしばむ、

わたし



どこをどうすれば

間違えてきたものを正せるだろうか、と

いつしか賢くなりそこねて、


すがりついた

ものたち、

もろとも、

転げたときから

起きていない


さかさまのまま

恥じらいをこめて

ただただ必死に呼んでいた

あらゆるさまを

この、ありさまで



わたしを離れない

嘘たちの、嘘


ほんとうは

すぐにも消えそうな日々を

良しとはせず、


口調のなかに

歩調のなかに

そのときどきで数をならべて

ながされつつも

向かっている


満ち足りて、

わたしは



知らないほうがいい、と語る割には

堂々としたこの哀れさを

ほどかぬための

風であろうか


それは、ときに不自由に

わたしを離れない

ことばのように

2008/01/21 (Mon)

[862] 粒子
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たくさんの淋しさは

胸の奥でそっと

優しさになる


それは

くわしく語らなくても

しみ渡ってゆくように思い

いつしかやわらかく

言葉のあやから

遠ざかる



おびえてしまうのは、きっと

包容のせい


思わず口をついたどんな意味にも

無力のままでは

いられずに



 ひかり、

 だからみんな

 うなづいてみせる

 受けとめ方を



いちばん小さくていい

つらぬけるもの、に

ときどきは傷ついて

こころでいよう


愛、と呼ぶことのきらめきに

だれよりも

そう、だれよりも

目を閉じていよう


終わりのない

粒子として



 いっしょに、

 消えてゆく日々を

 暮らそう

 ふたりで


 未来、のままで



あやまることなど

どこにも無い


はじめから、

永遠は


2008/01/22 (Tue)

[863] にぎやかな街
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にぎやかな街を生むものは

孤独なのだと思います


ひとりぼっちで

とても寒かったあの日

逃げる、という行いそのものに

迷い込んでしまったあの日

わたしが覚えたものは

背中だったと思います


必ずちがう

ひとの暮らしの

その、寒さの投げ捨て場のように

すれ違いながら、ひとを

わたし、すれ違いながら

にぎやかな街で

泣いていました


語らぬ雪が

やけにきれいで

理由の無いものごとに

別れを惜しむ一方でした



急ぎ足が得るものは

むやみな暑さと冷めてしまう時間


助かるための方法を

電飾にたずねても

あらためて

沈黙の夜、

でした


寄るものはいつも

似てしまうのでしょう

置き去りの後悔が

なによりも

言葉でした



新しさは古くなるので

なるべくならば繰り返さぬよう

聞いています、

いま


いつかの昔が

まだまだ遠くと思えるうちは

よみがえり損ねて痛むでしょう


にぎやかな街の

もっとも片隅にある、

路上において

問うでしょう

2008/01/23 (Wed)

[864] つくりて
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 つらいおもいが

 ひとつ消えたら

 代わりにひとつ

 ふわりとひかり



(たとえばきみが自転車だった頃、


(もしくは紙の

(飛行機、怪獣、手裏剣、吹雪


(あるいはお菓子屋さんでもいい、

(はなの飾りの

(草木のお城の



 おもいのままに

 もてなしつくし

 てのひらをただ

 つないで並んで



ひとが

おわりませんように



 夢とまぼろしは

 すこしだけ違う


 たずねることも

 さまようことも

 なんとかひとつ

 ひとつ生まれる



(子どもには子どものかぜ


(おとこには、おんなには

(それぞれに、うみ


(老いては、なお極みにむかう

(つくりてのみち


(いのち、ひび



ひとが

おわりませんように


きかいのそこの

ことばのなかで


みずからに


2008/01/23 (Wed)

[865] 水の蕾
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 そっと

 手のなかで砕けてゆくものを

 花、と呼びます



透きとおる風に

聴きそびれた使いを

そのみちを


ためらいながらも、

懐かしむように

かばうように


唇は、

うるおいほころび

開かれます



 咲いてゆくものは

 摘み取りなさい


 やがては同じ

 無限なら


 精いっぱいのしずけさで

 こぼれることです

 あすがあるなら



まるで

列車の日々のような

匂いについて


揺らすどころか

揺られるばかり


記憶、とよばれる

やさしいあやまりを

過ぎて重ねて


言葉は円です

まっすぐに



 そそぐのでしょう

 蕾は、空から

 いつでも

 空へ


 いつくしみ、とは似て非なる

 包まれかたを

 緩ませて


2008/01/25 (Fri)

[866] ゆきうらない
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わたしのなかでは

きえない、ゆき


きこえないことば、には

あふれるくらいに

ふれているのに


ふるえています

たしかさを


ましてゆく、ような

かさのなか


みずからふかく

かさのなか



おもかげは

ひとつの、きのう


くわしくなりえない、その

きのうはふえて


おもくなります

うらうらの

いし


ただようなみまで

おいかけ





うらない、

そうです


どこにもなく

どこででもなく


ついで、

あらゆるみず、を

むこうにおいて



わからない、ほど

うれて、うれゆく

からがらのひび


すみますか

やみますか


ふるい、わたしを

ひとみに

かえて


2008/01/25 (Fri)

[867] なまものことば
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ことばは

なまものだからね


時間とともに

かわっていくからね


古くなる、

そのたどり方が

気にかかるね



誰かにとって

なにかにとって

いい意味でのめぐりとなれば

肥やし、なんて

呼ばれるだろうし


放っておいた

つもり、がながく続いているなら

そろそろどうにか

しなくちゃならない



古いものを

きちんと古く、


わたしたちもまた

そうして儀礼を

生きているなら

正すべきだね



新鮮なものが欲しいです、と

口に出しても

出さなくても


いつか気がつく

古くなる



ことばは

なまものだからね


温度のなかで

かわっていくからね


生かしていくのは

生かされるもの、

だね




2008/01/26 (Sat)

[868] 睦月橋
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肩を

すべり落ちてゆくものを

不可能なくらいに

拾い上げるから

忘れておけない

まなざしの青


つないで

必死につないで

自分の口から出た言葉が

たとえ終わりを決めるものでも

別れることを数えていても


はじまってゆく

すべての代わりとなるように

燃やされていた

傷つき慣れていた

ひそやかに

明らかに



 向かってゆけなくて

 空を見上げるあいだ

 目覚めた背中が

 ようやく語る


 ひと言では難しい

 それぞれの思いやりで

 ため息たちが

 白く旅立つ



つかのまの恥じらいの

危うさを名乗らずに

受けとめていた

義務のはかなさ


せめて

確かめることくらいは

離さずにおこうと思う

適切に追いかけて

知ろうと思う



あどけない日々を

時代は細く横たわるだろう



だからこそ

失わないで再び会える

自分が決めた場所として

必ず、睦月に

ひとりずつ

2008/01/26 (Sat)
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