ホーム > 詩人の部屋 > 千波 一也の部屋 > 投稿順表示

千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[993] 天窓
詩人:千波 一也 [投票][編集]


ひかり、ってものに

形はないはず

だが

あかり取り、なんて

名のつく窓が

あるわけで

つい

つい

形を

みてしまう


そこには無いけれど

確かに、

無いけれど

あかりの姿が

みえてしまう


これは

とんでもなく

おそろしいことの

はず

なのに

おれたちは

間違ってなんかいない、と

自信をもって

間違えられる


あかり取りの窓さんよ、

よろこびってのは

そういうもん

だよな

悪く

ない

よな


あたたかい、

よな


闇、ってものにも

形はないはず

だが

おれらは

眠りにつく前に

そらの

窓から

闇を

みる


闇の形、と

呼びうるものに

せなかを

向けて

寝息を

立てる


あしたも続く

よろこびのため


よろこびのなか

負けないように

すすむ

ため


2009/09/14 (Mon)

[994] 雲の運びかた
詩人:千波 一也 [投票][編集]


中途半端な

自分自身のため息に

なんだかわらえた

正午まえ

背中の窓に

耳をすませば

いそがしそうな

鳥のこえ

わたしは

いっそう可笑しくなって

シャツのボタンを

ひとつ緩める



久方ぶりの

遠足みたいに

空のあおさを吸いこめば

四角いガラスは

とけてゆく

雲の

居場所を

知らせるように



毎日は

似ているけれど

少しずつ違う

確実に、

違う

たとえば

雲の横顔に

淡く

むかしを

見るような

自然な連鎖が毎日で



雲は

形を変えても雲であり

そんな簡単なことが

なかなか難しい

だからわたしは

ときどき適度に

荷を下ろす


雲に

習って

身をまかす


2009/09/15 (Tue)

[995] 滅びの歌に怯むとき
詩人:千波 一也 [投票][編集]



滅びの歌に怯むとき

ひとつの命を

わたしは

築く


終わるわけにはいかない

消えるわけにはいかない

と、

明日を願って

止まないで



 陰鬱な影の主が

 華やかな都であることも

 時には有るだろう


 万能ではない

 直感に

 どれほど

 背いていけるかが

 わたしにとっては

 ふたつめの

 太陽だ



滅びの歌に怯むとき

この手をこぼれる

光が見える、

はじめて

見える


そこに

わたしは

乗せられたような気がするし

はじめから乗っていたようにも

思えてしまう



何ひとつ

容易くは解せないけれど

滅びの歌に怯むとき

わたしは確かに

此処に在る


強固な

刹那



生まれ続ける


2009/11/05 (Thu)

[996] 遅く起きた朝は
詩人:千波 一也 [投票][編集]

寝返りを打つような

時計のリズム、



誤解して

透き間をのぞく

カーテンの、

向こう


けだるく

染まる週末と

けだるくなれない平日と

どちらの自分が本物だろう、



不思議もつかのま。

リアルの淵で

あくびを

許す


そんな僕だから

僕たちだから、

コーヒーの落ちる

湯気を

聴いていたいね

スタイリッシュに。

どことなく

いつもと違う感じの

いつもと同じ

ひかりの

途中で。


遅く起きた朝は

自分の可笑しさが

程よく

なぜだか

清々しくて、

「まぼろし辺りが幸せだ」

などと謎めいてみる。


傾くことに

恵まれなければ

傷ついてばかり、だと思う

途方もなく。

だから

僕たちは

このままでいい

このままが、いい。


またひとつ

ゆっくり、底で口づけをしよう。

遅く起きた朝は

僕たちは、


2009/11/06 (Fri)

[997] 八月の降る頃に
詩人:千波 一也 [投票][編集]

わたしたちを彩る

おもいでの確かさは

星座のそれと

とても似ていて

必ず

遠くで

きれいに滅する


届き過ぎたら

きっとわたしたち

狂ってしまうから

ほんのわずかな

痛みも伴わずに済むように

おもいでを

ゆっくり

静かに

変えてゆく


時は

流れを止められないから

進んでゆくことが

わたしたちの務め

それでも時に

振り返りたくなることも

わたしたちにとって

欠くわけには

いかない

務め

それならば

確かであるべきは

時を通過したということ

今ここで

おもいでとして呼べること


図らずも

難しいことばかりに

出会えてしまうけれど

それも

やがては

星座になろう

たとえばすべてが解け合うように

この

八月の

降る頃に


秋の

まよいを

音も立てずに

踏みしめながら

おもいでたちは確かになろう

この八月の降る頃に

2009/11/07 (Sat)

[998] ロスト
詩人:千波 一也 [投票][編集]


指のさき

雪がひとひら、消えました


わたしの熱を、あら熱を

かくまうように

消えました


うなずくべきことなど

何もないけれど、

わたしは確かに

うなずきました


すべて、

わたしはこんなふうに

失くしてゆくのでしょう




 この指に降りたものは

 雪でした


 しかしながら、

 消えていったそのあとまで

 雪と呼ぶのはふしぎです


 もう呼べないけれど

 呼べる気がする雪と似て

 わたしの時が

 つもります




必ずめぐる冬の日に

この身をぬくめるすべとして

わたし、

すべてを

失くしてゆくのでしょう


孤独の底に

落ちないように

孤独が底に落ちないように、

微笑みながら

わたしは

ずっと

 

2010/01/06 (Wed)

[999] 閉園
詩人:千波 一也 [投票][編集]

パークは閉園時刻を迎えて

ゆったりとした人波が

流れはじめる


夕暮れが終わりかけたときから

こんな光景をわたしは

切なく描いたけれど

そう、

確かに実際は

切なかったけれど

皆が一つに流れる様と

皆が同じく寂しげで

また、皆が同じく微笑む様とに

安堵を覚えたのも

確かであって


嬉々として

また、名残惜しそうに

人波は綺麗なライトの海を泳ぐ

ゆったり泳ぐ

真っ暗な夜だというのに

この上もなく

明々と


たまたまの一日を共有した人たちとは

別れの挨拶など交わさない

それなのに

心のどこかで

それぞれの帰路や、会話や、表情を

気にしてしまう


人が

人を思う気持ちは

街灯に照らされる影のように

ぼんやりと気まぐれだ

しかし、

失えない



パークは閉園時刻を迎えて

人々はバラバラの帰路につく

「輪廻とやらもこんなふうだろうか」と

わたしはそっと時計を見つめた


綺麗なライトの反射を浴びて

優しくみえた

駅の時計を

2010/01/21 (Thu)

[1000] 通貨
詩人:千波 一也 [投票][編集]

お金が無いと

パンを買えないように、

誰かを

そしらなければ

人とつながれません。

お金が無いと

ベッドで眠れないように、

誰かを

妬まなければ

人から認められません。


わたしが

誰かをいたわれば

その

行いは

高価な衣服になりますか。

わたしが

誰かを慰めたなら

その

報酬として

高層マンションに住めますか。



 人のこころは通貨です。

 使い途ひとつで

 人生が変わる

 通貨です。


 それは

 はるか昔からの風習で

 もはや変えられません。


 だから、ほら

 皆が自分の富裕のために

 こころを浪費させて

 ゆく。


 とりあえず、

 とりあえず生きられたなら本望と、

 こころが浪費されてゆく。



この国は

盛んに通貨が交わされて

まことに贅沢なものだ、と

わたしは

またひとつ

疲弊するのです。


通貨の一枚と

して。

2010/01/21 (Thu)

[1001] 服毒
詩人:千波 一也 [投票][編集]

月のひかりは

黄金めいて降りそそぐ


それは

太陽なくして

成り立たないことだけれど

うそぶき加減が身に優しくて

わたしはつかのま

あしたの重みを

脱ぎ捨てる



思えばずっと

ほんものを願ってきたけれど

にせものになる方法を

頼ったことは無い


不純でも

研ぎ澄まされたものならば

誰がたやすく超えられようか

月のひかりの黄金も

常世にそそぐ

真実であろう



 中天で

 偽らざる頂が輝いている



幻とは

旅にやぶれた亡者のことば


わたしのあしたは

透けてはいるが

消えてはいない

それゆえ今夜も

月を服する


聡明な

癒しの剣を

しずかに

深く

2010/01/25 (Mon)

[1002] おしまい
詩人:千波 一也 [投票][編集]


鉄くずが

泣きやんだ

そんな

気がした夕暮れだから

昔ばなしはおしまい

今日はおしまい



踏まれた枯れ葉が

くすっと笑って飛んでった

きっと誰しも

そうやって昨日を

語れるはずだから、ね

案ずるのはおしまい

ふやけるだけでは

重すぎるもの



古い公園は

独りぼっちを嘆かない

だから

むごいいい訳はおしまい

今あるすべてを連れてゆこう

きっと、

ずっと



すきま風は

呼び続けてる

いいえ、呼ばれ続けている

誰に、と

考えることが

もはや暖かいのだから

不幸な談義はもうおしまい



くたびれた服と

くたびれたからだ

お互いさまで

世のなか上手にできている

だから、慰めはおしまい

今日はおしまい


2010/01/25 (Mon)
747件中 (411-420) [ << 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 >> ... 75
- 詩人の部屋 -