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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[1173] 包囲網
詩人:千波 一也 [投票][編集]


わたしの不幸は

加護にある

わたしの幸も

加護にある


それを

知らずにいるわたしと

知っているわたしと

どちらでも

選べるというのに


わたしの孤独は

不幸をもたらす

わたしの孤独は

幸をももたらす


道標など

はじめから無い

どこにも

無い


あるのは音だ

不透明に

鳴り続く

音だけ






2012/11/23 (Fri)

[1174] 風のベル
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胸の向こうを

呼びさますのは

いつもささいな風ばかり


誰がおくった風なのか

どの手がとどける

風なのか


わからぬことを

受容したなら

そっと

だれかに

響くだろうか


だれかの朝を

告げるだろうか




2012/11/23 (Fri)

[1175] シンプル・ハート
詩人:千波 一也 [投票][編集]


やさしい話が好きなので

易しいこころを

うたいます


そうして

継がれてゆくうたは

どれほど賢い

毒でしょう


毒に

あかるい

小鳥の群れが

毒をおそれる矢に

射られても

易しいことばが

かこうでしょう


やさしい話の表紙には

先のとがった

ハートを添えて

ささいな傷など憂えない

易しいこころを

つなげましょう




2012/11/23 (Fri)

[1176] 金字塔
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いつしか

まぼろしは

味方になりすまして

あらゆるひかりの

残酷さを

麻痺させて

しまう


綴られた文字の

内側も

外側も

しらないならば

しらないなりに

柔らかくなれる

硬くも

なれる


この手に

触れられない

すべての記憶の源を

敬うことが

もっとも

重い鍵


罪ならぬ罪を

美しく

染めて

しまう

もっとも

暗い






2012/11/23 (Fri)

[1177] 臨月
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伏すべきあては

知らずにきたから

ねがいはさほど

鋭くはない


それでも

痛みは確かにあって

聞くべき声は

必ずあって

これまで

何度も

失ってきた


拾い集めた鏡のなかに

夜のかけらを

光らせて

何度も

何度も

求めつづけた


もう二度と、など

果たせもしない

いつわりならば

明日また

生きていよう


生まれてこよう

広大なこの

灯りの

すみに





2012/11/23 (Fri)

[1178] 余白
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なにを

描きましょうか

その余白には


なにを

足しましょうか

その疑問には


なにが

不満なのですか

その完成の


なにが

不自由なのですか

その独走の


なにを

飾りましょうか

その余白には


なにを

残しましょうか

その夜道には



2012/11/23 (Fri)

[1179] 常夜灯
詩人:千波 一也 [投票][編集]


なにも

視なくて良いのなら

なにも視ないで

おくが良い


なにも

聞かずに済むのなら

なにも聞かずに

おくが良い



常世をわたる夜の舟には

信じた過日が乗っている

にわかには

信じがたい姿で

時々向こうを許して

みせる




 洗い流したはずの鱗粉に

 うずもれている呼吸を

 見出せ、はやく




落ちてゆくのも

のぼってゆくのも

とらわれのない

従順な途


からまる糸が

淡く通過を始めたら

夜はまっすぐ

影になる


隠れようのない

炎と水が

時間を

結ぶ




2012/11/23 (Fri)

[1180] 山野の月
詩人:千波 一也 [投票][編集]


ひとりで仰げば尚更に

山野の月はきれいです


涙は

雲居をわたる舟

契りは

雲居をてらす舟


言葉が透ける霧の夜は

山野の月がきれいです


あまねく水面は

古巣です

あまねく種火は

郷里です



垣根をなくした風のふる

山野の月はきれいです



2012/11/23 (Fri)

[1181] 聡明
詩人:千波 一也 [投票][編集]



鏡の微動、を氷は敬い

飼い馴らされる首飾り



灯火、が微笑の末路なら

信仰はなお雨季を往く



偽りの身、の結晶に

記憶は告げる血の礎を




2012/11/23 (Fri)

[1182] あおい瞳
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歩き疲れたひとの背中に

時計がうっすら

見えました


あからさまな

時刻を告げない時計です


それゆえわたしは

さびしくなって

空の高さに

透ける

だけ


か細い音、に

すがるともなく

すべてをまかせて

ほんの些細な嘘さえも

守れもせずに

願うのです


わらわれそうな清浄を

願うのです



2012/11/23 (Fri)
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