ホーム > 詩人の部屋 > 千波 一也の部屋 > 新着順表示

千波 一也の部屋  〜 新着順表示 〜


[935] つとめて
詩人:千波 一也 [投票][編集]


つとめて

まっすぐに

まがっていきたいものです


つとめて

ねっしんに

さめていきたいものです


そうして

やっぱり

つとめてたくみに

へたくそになりたいものです



 うたは

 かぎりなく

 おまじないににていて


 ほら、

 だれもがじぶんを

 よそおいながら

 しんじつへと

 あふれて

 しまう


 そこにはやがて

 はながさくので

 ひとびとは

 しあわせ・ふしあわせを

 さがしはじめるのです


 だれもがおんなじ

 やりかたで



つとめて

じゅうなんに

かたくなりたいものです


つとめて

ぱさぱさに

うるおいたいものです



うまれもった、この

かなしみを


かなしみの

ひを

2008/10/23 (Thu)

[934] かなしみ
詩人:千波 一也 [投票][編集]


よろこび、という

ことばそのものの

よろこびは

どこにある


ただしさ、という

ことばそのものの

ただしさは

どこにある


どうして、という

といかけそのものの

どうして、は

どこにある


おかえり、という

よびかけそのものの

おかえり、は

どこにある



それなりに

じゆうなわたしは

おなじくらいのちからで

とじられようとして

いる



かなしみ、という

ことばそのものの

かなしみは

どこにある


かなしみ、という

ことばそのものへの

こたえは

どこに

いる


2008/10/23 (Thu)

[933] すくわれていたい、のに
詩人:千波 一也 [投票][編集]


あさがたに

いきかえるいのちを

つきはしっています


そうしてつきは

さかなのゆめを

おもっています


おたがいに

みるものがなければ

ただのあぶくですから

なんとなく

ちかい、の

です



けれどもよるは

かならずおとずれるよるは

ひとつのて、でさえ

うたがわせるので


みな

うらがわへと

わたります



 そのいとなみを

 だれかが「し」だと

 よびました



ときのながれは

むずかしいものです


すくわれても

すくわれ

なくても


そこここに

いたい、という

こえはおなじですのに


そこここに

いきていたい、のに



2008/10/23 (Thu)

[932] あめかんむり
詩人:千波 一也 [投票][編集]


あめを

かぶるひとたちは

おうさまとして

こわいことばを

あやつります


わがものがおで

わがものがおで

うそもほんとも

とびこえます



とうのむかしに

そらがなげだした

かんむりを


いまでは

だれもしりません



あめを

かぶるひとたちは

そのおうこくに

みをつくします


うたがいもせず

うたがいもせず

まぼろしかもしれない

かんむりを

そっと

のせて


のせられて


2008/10/23 (Thu)

[931] まざり、あう
詩人:千波 一也 [投票][編集]


かぜをすする、と

むねは

しずかさを

とりもどす


むかしむかし

おそらくぼくは

みずうみだったのだろう

かわではなく

うみでもなく


つきの

みちかけと

おしゃべりしながら

かぜのゆくえを

みていた、

のだろう



かぎがひかる、と

むねは

おそれて

さわぎだす


それゆえぼくは

こわくない、

こわくない、



なみだのなかの

てつに

なる



 あしたもかならず

 あめだろう


 いともたやすく

 よろこびに

 しずんでゆくのを

 こばむため



そうやってぼくら、

まざり、あうんだね


わかるかい、


きみのとけいが

かたるもの

わかるかい

2008/10/23 (Thu)

[930] もしもの為に寄せる歌
詩人:千波 一也 [投票][編集]


もしも

花弁が落ちたなら

終わりましょう、

きょうを


あしたを向いて



もしも吐息を

こおらせたなら

呼び直しましょう、

水の微熱を


いのちの名前を



もしも

願いを叶えたのなら

捨て置きましょう、

ちいさな痛みは


無数をひとつに

かえすため



もしも

ほのおに包まれたなら

夢の時刻はおしまい、です


星の列車を

仰ぎましょう



もしも孤独が

咲いたなら


はじめましょう、あしたを

かなしみの途中

やさしさの

向こうで




もしも、

もしもがほんとうならば

その為にだけ贈りましょう、

この歌を


にせものかも知れなくても

寄り添いましょう、

この歌は

2008/10/22 (Wed)

[929] 柑橘
詩人:千波 一也 [投票][編集]


きみに降る雨の日を

ぼくは知らない


いちばん、

知らない


余地の

あり過ぎることが

迷子という方角を狂わせて


ときどきぼくは

ひどくさまよう




ついつい

惹かれてしまうものは

控えめなつもりの

あまい蜜


それは

どこか乱暴で

やがてはよく似た

大人へ変わる




ぼくたちは、

背中未満


猛毒に対処する方法を

見つけられないまま

ながめることに

長けてゆく



ぼくたちは

匂い過ぎる、胸


うまれることへの

あこがれに

おぼれて

育つ、


果実のよわみ




きみに降る星の日を

ぼくは待っている


いちばん、

とおくで

2008/10/20 (Mon)

[928] 笑顔
詩人:千波 一也 [投票][編集]


雨よ降れ

ざんざん降れ

と、こいねがう村がある



たった

ひとつぶの雨だれにも

没してしまいそうな

舟がある




 めぐみや恐れや

 あれこれは


 ありえぬ声で

 あたりまえの日々に

 生み落とされる



 それを聞いたか、


 きみは

 聞いたか




笑顔はときに

ひとの痛みをやわらげる


そうして

ときにひとの痛みを

なお深くする




 わかりやすさの延長にある

 わかりがたさから

 絶えてはいけない

 響きがあふれる




向こう側、と指をさす

その自分にとって近しい距離を

遠くでだれかが

きっと見ている



それは

どこまで笑顔だろうか


2008/10/14 (Tue)

[927] 意味調べ
詩人:千波 一也 [投票][編集]

終わりは

すべて哀しいものだと

いつかあなたは

示したけれど

確かにわたしは

時刻をひとつなくしたけれど、

なくさなければ

始まることのなかった

時刻のなかで

わたしは

知った


ほんとの海を

そのための

日を



 愛することは

 哀しいことです


 間違えやすいものほど

 つながりやすくて

 誰もが上手に

 傷つきます


 そうして癒しを

 求めるのでしょう

 うたがうのでしょう


 愛することは

 哀しいことです



始まりは

いつもまぶしいものだと

あれからわたしは

覚えたけれど

あなたを否める

つもりはなく、

いまはただ

愛の深くを泳いでいると

あなたとは

出会えなかった

あらたな意味を探していると

伝えたい


できればそっと

懐かしそうに

2008/10/12 (Sun)

[926] 蟻をおもう蟻
詩人:千波 一也 [投票][編集]


蟻が

わらじの死骸を

運んでいく


気持ち悪い、とか

すごいちからだ、とか

そのさまに向ける言葉は

まったくの自由だ


だがそれは

彼らにとって

とても重要な生命の営みである


蟻が運ぶものは

確かにひとつの死ではあるけれど

それゆえにこそ

まったく新しい

生命でもある



 わたしはこうして思案に暮れて

 きっと明日には

 忘れるだろう


 だがそれは

 仕方のないことだ

 生命の連鎖の仕組みのなかでは

 まったく許されることだ


 明日が来たなら、

 わたしのおもいの端っこを

 誰かがきっと見つけるだろう


 みっともない、とか

 残酷だ、とか

 まったく自由に

 おもうだろう


 そうして次の日、

 必ずかけらをこぼすだろう



蟻が

ちょうの死骸を

運んでいく


わたしのなかに点々と

蟻をおもう蟻、が

広がっていく


2008/10/02 (Thu)
747件中 (391-400) [ << 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 >> ... 75
- 詩人の部屋 -