詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
祝福のことばには
飾りたがりの
性分があり
僕はまだ
あこがれの盛り
あなたの階段が
あたらしくなった日も
僕は
初夏の匂いだっただろう
あいもかわらず
まぶしさに
目を細め
あふれてゆく風の素顔について
何ひとつ詳しくなれず、
それゆえひとは
独りなのだろう
ひとを
ひととして
語り継ぎながら
美しさに染まる途中、をながく
ひとは
独りなのだろう
始まっているあなた、と
終わらない僕、と
つまり、未来
たとえわずかでも
軌道の重なりを憶えたら
すぐにも窓は
晴れ渡る
忘れたり
追いかけたり
ときには聞こえたり
完成された季節の
果実だ、
誰も
不揃いを味方に
しあわせになろう
順番に
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みつけたかった、のに
上手くはいかなくて
でも、
たまたまの風が
心地よかったりするもので
選ぶことのたやすさは
果てないそらを
みずいろに
ひろがる
しあわせが
かたちを持つか持たないか
つくりたての
梯子をのぼりながら、
ていねいに落とす意味のなか、
ことばは
ことばとして
こわれてゆける
うしろ姿と
まっすぐな目と
どちらも翳りを捨てられず
いつか
どこかで
名を背負う日の、
ゆめが
なぜだか
なつかしい
途方もない無限、と
だれかの口を
真似ながら
かたちを
貫いて
ここ、をよく知らない
そこ、もおなじ
いまはただ
続いてゆけるということを
よろこびにかえて
歩いていよう
小石ひとつも
踏みしめて
その、まんなかで
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揺れる、
ということを
幾度も揺れながら
風景は、
まったくとおい
わたしで
あった
と
えがかれてゆく、海
まっ白なのに
それはもう
古いかげ
波が
うたがい、過ぎて、
まぶしさに眩む
わたしの
はかなさは
たとえば枯葉のさいごのような、
くずれぬ声を持たぬこと
はざまに、
ただ、はざまに、
置き去りではなく
取り残されるでもなく
ひとつに定まらない
その、ひとつについて
あまりにも
やわらかに
すみたがる
かぞえ忘れた夏の日、は
絶えることのない
水たちの文字
いくつでも
失うことではじまるけれど
おそれ、
たやすくはないことばの眠りに
ひかりを満たす
迷子のように、
すでにまもられ
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剣、と
よぶのを避けたくて
声はひとつの
武装と知った
ちいさな胸を
軋ませてゆく重みが
町だとするならば
すべての指が
ともされる
祈りのなかを風は、
振り返らずに
問うように
循環してゆく葬列の
ときどきを
揺れ
再び、は無いだろう
ゆるされたくて
途切れるような
ときのちぎりを
磨きわたるまで
あるいは、
けして誤らぬままで
細くなる
ひと
その目の奥に
家路はなつかしく
きらびやかな禁断を
のがれるはずの夕刻に
ときが聴こえる
飾りが占めた
吐息をとくように、
わずか
ずつ
散り散りの
ゆくえを知らず
敢えて、
知らずに
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まばらなようで
まったく同じ
涙は
ひとから流れゆく
雨のぬくもりを
手探りつづける日々と
かぜの横顔について
語りあぐねてみる日々と
だれか
上手な線引きを
広げた両手に
足りないものを
ゆめと呼ぶのなら
形はそっと癒えるだろう
かりそめの無を
きれいに脱ぎ捨てて
底知れず
落ちつづける身でも
それは
一つのまなざしを
まもり通すための約束
過保護な庭も
はじまり方で名が変わる
ひとは
それほどむずかしくない
それゆえ
反する思いのままに
指をさす
染めきれない
無力な刃さながらに
高らかな
形容のたもと
空をあおいで
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桜の小枝にかえります
ほのかに色づいては
失うそぶり、の
はかりごと
お逃げなさい、と
ともる影
うなずく首は
まだみじかくて
黒の
とちゅうで
染まってしまう
お待ちなさい、
砕いてゆくから
砕かれる
ほころぶ鏡は
ほのおのかおり
橋をしずかに
鬼が、
舞う
よる
三日月と
およいだ名残は
目のなかの
しろ
いまも一途を
よそおいながら
するどさに、
微笑みは
にぶく
花のなまえ、のような
淡さをそっと
たべて、
います
岬のさきまで、
いつかの
奥から
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風たちの流れは
水のさなかにある
空の両手を
もうじき雨は
こぼれ落ちるから
だれもが海に
いだかれ
癒える
困惑のためのすべを
探していたのかも知れない
乾くことを
ゆるされない空洞として
瞳のうつわの
瞳のなかで
ひとつは
無限
やがて川は向かわなくなる
あつめることを
疲れてしまう微熱のように
添うことをわすれても
涙になる頃は
かさが増す
なりゆきは
はるか遠くで語られて
それぞれの日記の
差異が映える
波に
託されることを託して
あふれやまずに
いのちは
燃えて
五感はずっと吹雪のまま
ときの彼方を
焦がれるほどに
降り積もるこころなら
はじまりを慣れて
飲みほしてゆく
それぞれの
かならずの冬に
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こたえ、という
ことばそのものは
とてもかよわいものです
だからといって
あきらめたりはせず
突きつけることもせず
こころは、そう
並んでいけたなら
じゅうぶんだと思います
幼い日々は
そうして歩いていたでしょう
大人になって
なかよくすることが
難しくなってしまったとしても
思い出すだけならば
間に合いませんか
まだ
こころは細くなります
仕方のないことに
うなずきながら
あなたのほんとうと
わたしも同じです
かたちは違っても
かたち、と声に出してみたならば
みんなそっくりそのままで
案外つながってしまいます
誰のためでもない探し物のように
ここがあって
そこがあって
それぞれが
約束をつづいてゆく
すてき過ぎると
わらえるのなら
生きて、
叶わなくても
ゆめの代わりに
とらわれてゆく哀しみを
どうすることもできない姿でも
生きて
どうか、
生きて
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ひたむきだから
汗をかく
それは
おろかであるかも知れないけれど
ふしあわせの向こうが
しあわせであったり
するもので
虹は
しずかに消えてゆく
あおぞらがきれい
夜のあとならば
にわか雨にも
息づける
うしなうものなど
ありえないよね
変わってゆくことはあるけれど
変わってしまうものといえば
たとえば瞳の角度、
だろうか
水面でありますように
いつまでも
いつまでも
ねがうことだけで水になれる
そんなふたりが
守られますように
きみだけの永遠は
ぼくだけの
天使
いつわりではなく、
まるで子どものようにして
ここにうたがあるよ
あおぞらがきれい
流されるほど、
いたみはやわらかに
ひかるもの
ぎこちなくても
涙にうまれて
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かけ足に過ぎなかった
いまでもそれは
よくみえる
ほろにがい
夕暮れの日を
燃え尽くすには
まだ早い
わからないほどに
からまり続けて
いるからね
忘れてしまおう
約束を
忘れてしまえるから、
泣いて
わらって
崩れてしまっても
かたちと呼ぼう
きっと
灼熱にただ
めぐられながら
いつかの背中も
案外近い
そんなふうにして世界は
やさしく
遠く
ほら、
夕焼けている
すすむ道にも
戻る道にも
あかあかと
また
夕焼けている