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千波 一也の部屋  〜 新着順表示 〜


[775] 真冬を知らない
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わたしはまだ

運ばれてゆける



むずかしい物事を

ほかの名前で呼ぶよりも

ここが峠の途中なら、

そらにまぎれず

澄み渡りたい


あなたのそばには無い数を

おだやかに

解き放つ、太陽の真下



優しさはいつも後ろから

雲のかなたの眠りのように

及ぶはずもない、

ひとすじの

みち



留まりながら

うしないながら

なつかしさに長けてゆく

のぞみの水底は、

かたちを拒み

まもりを

永く



凍てつくことは灼けること

せめてもの願いたちが、

吐息をつづって

清らかに、

降り



赤からゆびへ

黒から波間へ


閉じ忘れられたとびらには

だれかの背中が

しずかに灯る


終われない、希求


青から生まれる熱の積もりに

白からのがれて

真冬はこぼれ


いつもいくつも


2007/02/27 (Tue)

[774] 代償
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 きみの名前をおぼえた日から

 ぼくはふたつを呼んでいる


やさしさは偽らないからね

溢れても

まみれても

ささやかなすべてを

見失わないように


 疑うことは

 まもることから始まってゆく
 
 信じることは

 攻めることから転じた姿


あしたはやがて

きのうに変わると云うよ

いくつのきのうが

安らぐだろう

ここでいま



みたこともない宝石は

いつまでも輝くのだろうし

きっとすばらしいのだろうけれど

気づかないまま

踏みつけてしまったりは

しないものだろうか


 語り尽くされたものの隙間から

 こぼれるなにかを待ちながら

 ぼくは

 きみの名前を

 ひとつに結んだ

 ふたつの腕で

 愛のさなかで



真っ直ぐに

真っ直ぐなものをたよっている

やわらかに

やわらかなものを傷つけている


 触れるということは

 あまりにも非力さを明るくするけれど

 それはかなしみではないね


 敢えて言うなら、そう

 かなしむための


2007/02/26 (Mon)

[773] 蒼から目醒める
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ざわめきを聴いていた


誰か、いいえ

それよりもっと

わかりやすいものたちと

孤独を分け合って

ざわめいていた

聴いていた



つばさを諦めることで

繰り返されてゆく、

そのつばさに

そむきながらも

満たされてゆけるから、

どこまでも

どこまでも

とまどい続ける音がある


そこからが、波

水のいのちのそこまでの



くずれるかたちと

真夏はすずしく

託す途中と真冬は祈り


おなじことだったかも知れない

たとえ真逆だとしても



そらから降りてきたところ

あるいはうみを畏れるところ

溜息ひとつも

ひかりとなるなら

はじまりのため

射抜けばいい


すべてを

刹那のうたがため



うごめくほとり

揺らめくかたわら

ひとしれず花のほころぶように、

蒼から目醒める

無数のゆめに


永遠をゆく

水のいのちは


2007/02/26 (Mon)

[772] 粉雪
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なつかしい匂いに

ひたる冬、

寒さは

使い慣れたはずの指先に



疑いようも無いくらい

数をつのらせて

まもるべきが

すべて、に

なる



泣いてしまうことも

ねむってしまうことも

きっとなりゆき、

逆らうことで

知りうる

空、の



思い出さない約束を

思い出せなくなるまで

ここは、

手紙


宛名を忘れる代わりに

風のことばを

ただ負って

損ねた、

いろ



覚えきれないものは

誰にでもあるから

ささやく形で、

粉雪は

ふり



上がってゆくものが綺麗

舞いながら、散り

さかいを幾つも

さまよって


頬が濡れたら、きのう


きのうはどこにも

下がらない


2007/02/08 (Thu)

[771] 動脈
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どんな夜にも月は鎮座して


 炎と水とがこぼれ合うから

 欠けても

 ゆるし

 て、


けものは静かに

帰属する



荒涼の異国を踏むようにして

夢見の鮮度に奪われて

濁りのそこには

清らかな、

らせん

健気に待つ身を

みせながら



 月は、まだか



重なる針に畏れをなしても

継がれてゆくものは

ひとつの冷酷


鼓動を拒むさなかでなら

失わずに済んだかも知れない


 手のなかで握るものに

 いつからか

 傷ついて

 紛れる、

 ふか

 く



ふり仰ぐたび

思い出せるような気配が

肩にそっと

圧力を



 まだ、

 生きて、まだ、



無言がほころぶ夜にだけ

のぼりゆける

音階がある


 ともに、

 ともに、触手をかばい合い

 ながれのために

 その脈拍

 は



射抜かれるほどの透明を

つなげて

消えて



しじまは、遙か


2007/02/05 (Mon)

[770] わたしの水は
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わたしの水は干からびる

あなたが逃げた

ささいな

謝辞に


わたしの水は追いかける

あなたがこぼした

祈りの岸から


わたしの水は溢れない

あなたがなくした

なみだの代わり

波へと寄せて



 いますぐに

 つながるための魔法は遠い
 

 忘れたければ忘れなさいと

 いちばん近くで

 はぐれ通して


 消えてゆくことを

 どこまでなぞりゆきますか


 消してゆくというのに

 そのうえに

 なお



わたしの水は契らない

あなたがその手を

千切らぬように

やさしく

とけて


わたしの水は知っている

あなたがあなたを

見つける日々も

見つけぬ

日々も



ふしぎをさすらい

いのちは揺れて

わたしの水は

まだまだ

そこか





わたしの水は


2007/02/02 (Fri)

[769] しあわせのとき
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ぼくが

ぼくから許されて

きみがきみから贈られる



ぼくは

ぼくだけど

きみを愛しているわけで


いちたすいち、は

いまならわかる

たやすく

解ける



ぼくは

いつのまにか

こんなにもぼくだったんだね



ほら、こぼれるすべてがやさしくて



しあわせは

ときのなかにある


必ず、ときのなかに



ぼくが

ぼくから満たされて

きみがきみから望まれる



ねがいごとは

難しくしないで

ささやかな日常を

いっしょうけんめいに

小さいなりに

ちょうど

よく。



きのうときょうと

かぞえかぞえて

またあした


ふたりのために

ひとつの

ために

2007/01/29 (Mon)

[768] 百花繚乱
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浅はかな哀しみを

どこまでも赦してしまうので

慕っています、

ひとの背を



重ねるような

重ねられるような

だれのものとも知れぬまま

だれにもどこにも

辿り着けずに

ひとの背は

いつか、

行方を忘れてしまったようです

それゆえ見つめて

あるいは見つめられて

 削りゆくひと

 剥がれゆくひと

 撰んでしまうひと

そのまま、

怯えかねてゆけるなら

かろうじて影は

かたちの為に

霞みやまぬ、

彼岸です



 のぼりゆけますか、

 うみの底まで


荒れてしまう傍らから

此岸は鳴ります

憂いも徒労も

あざやかに、闇

なにも

たやすく

消えません


 託していますか、

 こぼれる総てを

 たよりに漕ぎつつ



詠みびと知らずは絶え間なく

それがいしずえ、

巡りの花かと



預かりものをなくした素振りで

そよいでゆきます、

月をいくつも

咲きながら


2007/01/24 (Wed)

[767] 空のしるべ
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散文的であるかも知れない

晴れ間を見つける

こころはいつも



古くはならない

あたらしくもならない

それが空なら

繰り返すものごとに

少しだけ優しくなれそうな

そんな気がした



 照れる日は

 はね返されて

 ただまっすぐに

 まぶしく

 逃げて


 もどかしさのなかの微笑みを

 抱きしめながら

 守られながら

 あかるい恥じらいに

 気がついてしまいたい


 句読点のあやまりを

 広くほどいて



いつしか失っていた順番に

孤独はなおさら

嘘へと傷んで


静粛に

静粛な調べは

美しさを離れた毒薬として

続けるしかなかった韻律だった




沈まない空に

背いたところで

やわらかな誤解は崩れない


誰かのただしい遠近法に

すくわれながら

今日もまた


散文的であるかも知れない


知らない空から

知らない空

まで


2007/01/21 (Sun)

[766] 夜汽車
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窓の外は、夜


それゆえ汽車は吐息のように

曇り曇って

揺れに

揺れ



そこからなにが見えますか



わかりやすいものは

なぜだか頼りなくおもえて

背伸びをしてみたけれど

やっぱり瞳は黒でした

いつもいつでも



ときどきは

いさぎよく溺れてみたいものですね

たとえば愛に



夜汽車に乗って

あるいはそれすらも遂げられぬまま

窓の内は、窓



あなたはどこを往くいまですか



相席でも

すれ違う車両でも

仰ぐ月には変わりがなくて

どこまでも風ですね

気がつけない嘘、

なのですね


荷物は軽く済ませたいのに



叶うなら

やさしい町まで

待つことだけを忘れたわたしを

こころゆくまで笑えるように



いつかの影はもう遠くても

眠りはそばに

必ずそばに


なくしたものはそのままですか



2007/01/21 (Sun)
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