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千波 一也の部屋  〜 新着順表示 〜


[755] 惑星
詩人:千波 一也 [投票][編集]



この星には喜びが溢れていると

わらう君の目は

泣いている


この星には悲しみが渦巻くと

ささやく君の手は

爽やかだ



満天の星空はきれい


僕に解けない謎なんて

まだまだ幾つも

あるからね



さようならを待っていた

避けていたのは

こんにちは


鏡よ鏡、そこにいるのは誰ですか



近くにあっても届かない

遠くにあっても

たどりつく


そんな気配を鵜呑みにしながら

流れる星につかまった、





形をおぼえることがすでに形で

旅人のうたなんかを

口ずさむ、

僕は


終わらない、

終われない、


ぐるぐる回した地球儀を

ぴたりと

止めた


2007/01/10 (Wed)

[754] 反旗
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掲げられている、

無表情


ときおり

風につられて

わらいもするが

恥じらえもせず恥じらっている



そらへと挙げた小さな拳は

ささいなものほど

守りぬけるのに


もう、

ささいなものすら許さない



傷つかないためには

傷つけること


でもそれは

だれかにとって

やさしい語りになりうるだろうか



吹かれるだけの、

無表情


ときおり

風につられて

うたいもするが

聴かせあぐねて疲れ切っている


孤独とはぐれて

ただよって


歓迎とも

決別とも

取れるかたちで

ただ、風に


2007/01/10 (Wed)

[753] 雪崩
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すべてを飲み込む激しい流れは

もはや雪崩と呼べない



かすかな吐息

たよりない足音

あしたをさぐる腕


たとえばそんな営みに

じっと耳を傾ける静寂こそが

雪崩の呼び名に

ふさわしい



待つものごとがあっても無くても

待たれているということだけは

くつがえらない決まりごと



白紙のうえで白線は

はじめからえがかれている


気付かずにすむことがおそろしさ



すべてを押し流す激しい雪崩は

とうの昔にはじまりがある



まばたきの間にうつろうものなど

はかなきいのちのほかにはない


駈けてゆくものには

駈ける姿がみえやすく

駈けない姿を

信じこむ


その失速を

雪崩はたしかに聴いている



終わりはすでに止まらない

はじまりのなかの

はじまりに


2007/01/10 (Wed)

[752] とらわれの蛇
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それは髪ではなかった



すがりつけない言葉でも

寄りかかり続けた、

矛盾


まもるわけでもなかった壁が

ひび割れようとしていることに

わけもなく怯えて



臨月は、皮肉



あまりにも目を避けたから

あこがれて

落ちた、のかも知れない



潔白に、化石




放れるものはたくらみに長けすぎて

泣きたいきもちは

剥がされてゆく


拒んだなにかを埋め合わせるために

いのちを含んでは

さびしがる性


巻きつけた夜の深さを首にともして

毒牙はあてもなく逃げ惑う

みずからを狂わせて



やさしさはかけら、

握りしめている

かけら




歴史の、凝固




いつか髪ではなくなった眼光に

告げる言葉をまだ知らない


すくえなければ

すくわれないから

呪文を、漂流


一途な、

緊縛


2007/01/10 (Wed)

[751] 擬人法
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かなしむこころではなくて

かなしみという言葉を覚えなさい


よろこぶこころではなくて

よろこびの色彩に詳しくなりなさい


問うことはよそにまかせて

やみくもになぞりなさい



優しさといたわりと子守歌と


そこに上手に落ちつけば

皮膚の温度は恒常です

はなさぬように

はかりなさい



ありがたいものはすり替わり、



俊敏に嗅ぎ分けることです

愚鈍さを


鋭利に聞き分けることです

優劣を


ただし隠して

野性をひそめて



思いやるための思いやりさえ

まぼろしと消す

すべての

すべに



こたえることをまずは預けて

ごまかすことに慣れなさい


それほどかたりはたやすくて

すぐにもかたちはいたむのです


ひとごと世ごとに

むずかしく


2007/01/10 (Wed)

[750] スケッチブック
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おおきなカバンはいらない


なるべくなら

手ぶらが

いい



気の向くままに街を


ゆかいなものに

流れるものに

みじかく綺麗にあいさつをして

気の向くままにときを



吸いこんだなら

はなすだけ


そうしたら

未完のスケッチブックが

またひとつ喜ぶから

あしたのわたしは

きのうと違う

いまから

始まる




宛てる誰かをさがせなくても

いそがなければ

たよりは届く


やすやすとは

破かれない紙であるために

約束をまもること

上手にはなして




見つからない日々が

見つかるのなら

それは明るさ

かならず光



いつまでも遠い道のりが

完成の枠組みなのかも知れないね



もとめる先を決めつけないで

はなしたぶんだけ

浴びてゆく



2007/01/10 (Wed)

[749] 列島
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焦りをおぼえた場所からは

やさしくきこえる

誘惑のつめ



口笛をなつかしむまでは

曲がり角などこわくはなかった



憂いにまみれた地平には

消せないほのおと

水夫のつばさ


雲のながれを追えない煙が

なみだを起こして夕日に染まる




いつわりをあばく緯度に立ちながら

傾けられない慰めの風


甘えてしまえない白々しさを

辛辣なけものが吠えたてるだろう


よこしまな直線に

地図はほつれて




望みのかわりに持つものは

いつかの日々の忘れもの

いつかの日々に

送るもの


擬似をたずねて数千里


沈まなかった向こう岸まで

手を振るかたちは

よろこびを負う

かろやかな

疲弊



ほどけた靴紐には

素直なむずかしさを乗せて



海をわたらず空を敷かず

さわやかな愚問を

浮かべて

並べて


永遠は滅びてもゆるやかな修復を




2007/01/09 (Tue)

[748] 雪月花
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まあるい卵にうさぎの眠り

たゆたう袖から

虎のまなざし


いつかは還る最果ての灯へ

のぼる姿を

手から

手に



浮かべた舟は遠ざけて

くれない川面に

こもりうた


幾度と寄せてもうしろ髪



無垢なるくすりはあめの糸

ときの刻みはささやかな水

野に咲く憂いは

うらがわの円

わかれみち


雪月花

ひらりと舞わせば無人の島ぞ

匂いをたどりて

扇のかさなり


おもいでの背は降り積もる、坂



うすくれないに射抜かれる影

みどりの波から繰りかえす羽

まばゆい黒をさすらいながら

深紅を迎えるあかつきのまど


満ちゆく風は洞穴を縫い

けがれた着物を

とおされて

去る


ひかりの傾斜はなおも険しく



おだやかな陽にまもられる庭

残されたものこそ

ぬくもりを云う

さよならと

笑み





2007/01/07 (Sun)

[747] 笹舟
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折り目もただしくつゆにのせ

負われ、

終われぬ

いのりをはこべ



いずれの岸辺がふるさとか


一途なさわぎに

まみれて

むやみ、

それゆえ波間は

あかるく

くらく、

砕けるいのちは

ひたすらに

あお、


いつか奏でた

うつくしい響きの

いつまでもなつかしい、あお



かえり着きながらも

すべり落ちることを

降りしきる、三日月



みちをもとめることだけが

みちではないような、

昔がきこえる

かぜの庭


ささやきはつめたい



飾られたすえの飾りではなく

ただまっすぐに

願いにまわれ

くるくる、





こまやかに鳴るきびしさに

覚めて、

冷めても

いのりをはこべ


さなかの、清流


2007/01/07 (Sun)

[746] 春秋
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隙間をあやすように

いたみのたぐいも

たぐり寄せる、

ゆび


からくりかも知れない、

そんなたとえのむなしさに

あらがうことを捨てたとしたら

だれかの日記を

風はめくるだろうか



通うこと、

ただそれだけが季節のしるし


あそびの裾はめぐる水


誘われてさらわれて

濡らされて

漂わせ



いやしはいつも静かにくずれる

ゆるやかにちぎれる、

約束のとき


果実のための果実はどこに



もてあそばれる鉄を

ささえる皮膚は

あまりに脆く

涙から、

なみだから遠い国は

見つからない

それでいい



弔いははじめから

枯れてしまうなかに在るのだろう


見渡せば、

よくよくながれて

すべてはすべてを待ち

焦がれている


2007/01/07 (Sun)
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