詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
みちは
みちゆく
いろみちる
こみち
ちかみち
ぬかるみち
よみち
あぜみち
けものみち
さざなみちかきは
かみちぎる
そら
もゆるみちのはて
よみちがう
いと
ひなまつるにわ
かぞえばな
りきみつまどう
みなものうつわ
ちがさくら
ひかりみち
わがみちらざり
みちび
かれ
みちは
みちゆく
くにみちる
かざみ
ちちはは
うみちとせ
このみ
ちいさき
やまかぶりつつ
みちしるべとて
あおぐみちから
まつひは
まどか
みちゆくみちに
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はるをいたみながら
ひとつ、指を折り
なつのまよいに
迷えないまま
指折りは、
ふたつ
みっつ、を数える指には
こころならずも
あきがなついて
ちからずく、のような
諭されているような
圧倒的なふゆが
指を折る、
よっつ
なすすべもなく
いつつめの指は折れ、
握りしめることの頼りなさは
今もなおここから近い
それゆえに
つぎの数をもとめるけれど
閉じられる指は
とうに無い
もともと
わかっていたことかも知れない
えがおの意味は
必ずしもひとつ、ではなく
過ぎ去る風に
なにかを
託す、
あかるい断崖
ここは六番目の季節
そっと
開かれてゆく
まもり、の季節
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照る岩に
砕かれてゆく波のうつくしさ
それはもはや
言葉には乗ってゆかない
冷たい、というわけではなくて
いつからか
鋭いものが岬だとおもっていた
まるくても
まるくなくても
海風が通る、それだけでいい
岬に立てばよくみえる
ねむっていたものを
呼び起こす、夜明けに吐息は
だれかをつつむ
だれかのねむりを
しろく、隠す
朝は遙かにうたがわしい
それゆえ夜は、
満水のそら
落とされまいとする非力さを
確かめ合うおこないが
時刻という名の傷
やわらかに灼ける、髪
草原さながらに
みがかれて
ゆく波
数え足りてしまうところまで
かえっておいで、と
陽射しはいつも
逆説的にとける
走っておいで、
戻っておいで、
瞳の向こうでささやく種火
たてがみに揺れる、季節は
あおくいなないて
詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
たとえば空が
海から生まれたものだとしたら
鳥はおよぐものたちで
魚は羽ばたくものたちです
たとえば光が旅人ならば
わたしたちも、風
無理のない
ながれ
吹雪は
ゆめの国からの使い、です
ことばを閉ざされたくちびるには
けがれなき白、
ほら
思い出しませんか、
甘いクリームあるいは
シュガー
熱を取り巻くものは
いつも熱ですから
たやすく迷える
羊です、
みな
もしもあしたがまぼろしならば
おそらくきのうも同じです
いま、と
なぞった瞬間に
すべては過ぎ去ってしまっても
未だ来ない、
未だ来ていない誰かを信じて
待つ身はいかにも
ゆたか、です
たとえば鏡が逆さまだとして
星空を射る瞳は
直線
ともに
いくつもうたいませんか
足りないものを足りないままに
それでもせせらぐ
このときの
瀬に
詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
朽ち果てようとする一枚の葉に
思い出します、
たいせつな
いろ
寒さがつのりゆく風のなかで
あらゆるものを踏みつけて
あらゆるものに火を放ち
暖まるすべは
そのすべもろともに、燃やし尽くして
震えるからだを、いま
北、がかすめてゆきました
わたしの九月は枯葉のなかです
しずかな雪の汚点のように
この手に取れば、
散ります
寝息は
短い一言だったのかも知れません
なにごとも
確証がないばかりに
真冬の星空はこんなにも澄んで、
そっと押されてしまいたい
背中です
静寂を破るものは頼りなさ、
足音も
曇る吐息も
おかえりなさい、
そうしてすぐにもお別れです
こころから遠いものたちに
戸惑う素顔を描けません、
いまは、
まだ
ねがいの痛みに隠れた分だけ
盗まれてしまう、
九月です
知りゆけば、
なお
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こぼれ落ちる涙に
いとしさを聴く
ときには
いらだちを聴き
いたずらもいましめも聴く
わたしたちは温度を知っている
あるいは
温度の選択を知っている
ことばの川にひたす手は
ぬくもりに濡れるだろうか
それともつめたく
流れの先には海が待つ
みえることと
みえないこととは
同じことかもわからない
意味深に
潮騒は鳴りつづく
こぼれ落ちる汗に
耳を澄ませているのは
水のいのちかも知れない
こぼれ落ちる雨はきょうも
そらより狭く
閉ざされて
すべての温度をすりぬけて
水にふれたい
純粋に
飲み干すものがことばなら
わたしたちの渇きに
終わりはない
いのちの音階を辿るなら
すべての温度をすりぬけて
たとえば笛の
かなたの笛
まで
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降りそそぐものは、波です
満ちてゆく潮風に
しおれることも
ときには
開花
白銀は、あこがれですか
うらがわですか
ゆるやかになきます
あの、下弦
背中をなぞることが窓、でした
やわらかな胸には
皐月のあやめ
あやめ、てからまり
さきほこる、つの
たつ、みさき
ゆくえを問う耳が
海鳥なのかも知れない、と
かごはねむります
揺れてねむります
色濃いゆめを光にかくして
牙をはじらう
鱗のよる、
みな、も欠けてはいませんか
降りそそぐものは、波です
あたらしく使い古すたびに
舟のきしみが透けてゆきます、
ね
音色はこども
いつまでも、こども
孤独にふれたなら
あふれてゆくのが涙です
迎えても
さらっても
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飛ぶ鳥の名前などは
どうでもいいことかも知れない
晴天をかもめ、
夕暮れには
からす
一応の名前で
呼んではみるけれど、
きっと何かが間違っている
かれらは一途に、
おそらく
方角という意味にはまよわずに
空をゆくもの、
黄金へ向かう鳥
傷口からにじむ流れは
錆びた鉄だと
ひとは、
云う
わたしたちに
金曜日のくだりは終わらない
まばゆいものには目をとじて、
あらがうことも
そむくことも
ゆるやかな
封印
存分に焦がれたてのひらだけに
鍵は光と去る、かも知れない
縛りつけるすべてを解き放つ、
そのすべはだれもが
その背に
きっと
黄金へ向かう鳥、
きれい、と
うつむい
て
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想いと
ことばは
まったくのべつもの
あまりにも似通っている、べつもの
うまれた想いを、
そのままことばに乗せられる、と
そんな気がしてしまう
ことばの背中に、
想いのすべてが乗っている、と
そんな気がしてしまう
けれどふたつは重ならない
重ねたくない
というわけではなくて
単純と呼ぶべきか
複雑と呼ぶべきかはわからない
ただ、
想いとことばは
重ならない
しかも、ときどき
わたりゆく手紙は
いろを持たない、いろ
それは
おもいでだけで描こうとする
虹のなないろ、
のような
わたりゆく手紙はひとひらのいたみ
時のきざみを嘆くのならば
文字のきざみも
わかるはず
ふれる、ということは
ふれられていること
与えるものと与えられるものとが名前
かぜの迷路には
しるし、があふれている
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わかり合えたら素敵だね
そういうことを
忘れずにいられたら
なお素敵
だね
途方もないことは難しくて
些細なことでも
難しい
分けることの意味について
だれか暗誦できるかい
身に余るものごとは
とめどないけれど
いさぎよい身で在りたいね
いつだって
いま、から順番に
うしなってしまうときの輪に
自嘲ではなく
あきらめでもなく
乗り継ぎ慣れた旅人だね
だれもが
同じく
「いつかどこかですれ違いましたね」
気のせいかも知れなくても
幾度も交わした言葉かも知れなくても
わかり合うために
はじめまして、と挨拶を
変わらないものと変わるもの
車窓はながれても
鼻歌にすべてを
あずけて
ときを味方に
羽ばたくために
はじめまして、と挨拶を