詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
扉が
しずんでしまう前に
瞳をひらく
決意をしよう
内に
あふれる
海原をのがれ
足を
こわごわ立たせる場所が
小さくてもいい
流れ着いた
この岸を
いまは
瞳に焼き付けよう
扉を
閉じるのも
開けるのも
まずはこの手に
つかんでこそ
そしてこの手につかむには
しずむより早く
扉を
扉たる理由を
見つけなくてはならない
扉は
形など持たないのだから
われわれには
それを形づくる権利が
幻としての権利が
握らされている
扉は
しずむものであるし
溶けてゆくものでもある
わき出るものであるし
舞い降りるものでもある
この手を
見つめる瞳が
もたらすこころは
どんな形をしているだろうかと
問い続けることと
扉とは実によく
似ている