詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
やわらかな睫毛は
煌めきながら砕けたから
ぼくの腕には、もう
何も残らない
その
残らない感触が
時間、なのだろう
いきているのか
いないのか
真っすぐ過ぎて
やわらかい硬度の向こう側に
ひとを飲み込む孤独が
ある
らしい。
いつかきみは
宇宙のかなたを知りたい、と
教えてくれたね
そんなきみを
思い出すごとに
宇宙を忘れたぼくの暮らしが
鮮明になるよ
眠らずに済むのなら
夢など見ない、かもしれない
夢を見ないで済むのなら
痛みも傷もない、かもしれない
痛みも傷もないならば
幸せに迷うことはない、かもしれない
すべて
憶測だけど
すべてが
誤りの連鎖である、などと
決めたりできないから
しばし、
凍結
あながち
誤りでもないかもしれない、と
再び迷いはじめたら
何事もなかったように
呼び起こそう
いまある
そのままの流れを
血脈を。
頷けない疑問符は皆
いつしかきれいに
逆さまになって
なお頷けない
形を作る
時間がきっと
ありあり、と仲立ちをするけれど
その罪は暴かれない
永遠に
暴かれない
きみが、もしも
冷たい生命体だったら
ぼくはこれほど惑わない
ぼくが、もしも
冷たい生命体だったら
きみのあれこれを
憂えたりしない
ほんの
ささいな遊びで良いから
つかの間の本気を
信じてほしい
覚悟や
決意を
信じてほしい
きれいに消える
その前に
一度しか会えない
その素顔のまま
で。