詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
おもいで、と
よく似た部屋では
呼吸がかなしい
呼吸が
まったく叶わない、
なんてことにはなり得ないから
しんしんと、
かなしい
痛み、に
からだは染まらないから
世のなかは海
まったくの、
おぼえたことは
誰かがいつか棄てたこと
わすれたことは
誰かがどこかで願うこと
気泡、と見紛う言葉には
つねに時計が
寄り添って
いて
唯一無二の正しさを
ちくり、ぽつり、と
囁き続ける
いつか
横たえる波打ち際は
きっと誰かの
カーニバル
もしくは誰かの
メランコリー
憶測だけでは
生きられないけれど、
憶測なくして
華はない
だから、
いまはもう
空っぽ、でいい
おもいで、に
なれるなら
名前だけ
でも