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千波 一也の部屋


[610] 逆光の丘
詩人:千波 一也 [投票][編集]


その階段は

まぎれもなく階段であった


手入れの行き届いた草木と

光を反射する白の像

そこは

入り口にも満たなかったのだ

まぎれもない階段の途中

この両目は 

風の遊びだけに誘われて

入り口は

沈黙していた



修道院は

その広さを 

慎ましく囁いており

旧き建造物でありながら

新天地へ続くまばゆさを

しずかに絶やさずにいた


猛暑のしたで

すべての窓は閉じられており

敬虔なる空気へと寄せる想いは

尚更に

美化されてゆく

うっすらと汗を匂わせる私なのだから

それは至極当然のこと



映画の場面が数枚、脳裏をかすめた


はっきりとは見えなくて

のどが強く 渇く

欲求も程々にせねば、唯みにくい



下りの階段の足音に息づくものは

気の毒なほど鈍い影 

軽い影




恋人とつなぐ手の反対にはビニール袋

敢えていうなら白、の

その中身は

甘い甘い砂糖菓子


修道女たちの手作りらしい



2006/09/09 (Sat)

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