矢継ぎ早に
新月は降り注ぎ
縫い針がまたひとつ
遠雷に濡れている
吟醸の名を濁さぬ盆は
薬指だけの浸りに あかるい焔を映し
無言の岸辺を満たすのは
衣擦れの波
鈴なりの
陰
風の旋律が過ぎるとき
水の揺らぎは紋様となり
瞳の数だけ姿見は
その透明度を
ただ 募らせてゆく
かくして
碑文は護られる
もみじの錦は 不易の標
こおれる大河の 螺旋の枕
ぬかるむ土に 栄枯の砦
眠れる貝は 星夜の 縮図
四季を奏でる歯車に
刻字は彫りを深くして
その痕跡の石のかけらは
種へと宿り
路傍の随所に
繚乱す
2006/09/09 (Sat)