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千波 一也の部屋


[652] ラベンダーの雨
詩人:千波 一也 [投票][編集]


むらさきいろの約束は破られることなく
 
野の一面に揺れる香りは
 
けものの匂いに
 
けがされない



 
いろと香りがラベンダー

 
あまりに無知な
 
目と鼻の先で
 
しずかに夏は終わりへ向かい
 
かるい汗のしたたりに
 
ハンカチが浅く溺れている


 
あらゆる書物をほどいてみても
 
はかないものの名前など
 
一覧になってはいない

 

いつ注ぐとも知れぬ雨に
 
あらがうすべは傘

 
太陽が味方であると信じれば
 
群れなす手のひらには
 
隙だけがただ明るい



 
いろと香りがラベンダー

 
誇り高いうるおいのなか
 
まったく同等に誇り高い
 
かわきの雨が
 
透けてゆく


 

風はきっとなにも知らない

 
より分けず
 
見破らず
 
すべてを流す波となる

 
きょうと
 
あしたと
 
その先に待つきのうへと



2006/09/09 (Sat)

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