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千波 一也の部屋


[656] 水の廃墟
詩人:千波 一也 [投票][編集]


みなもとの名を水だけは忘れない


  
やさしすぎるのかも知れないけれど
  
そうでなくては 
  
なにも生まれてゆけなくて
  
それを知っているから
  
水は

  

弾丸という異物を迎えることで
  
鳥は空から落下してしまうように
  
速度こそ異なれど
  
確実に
  
水は



  
とても自然な流れのなかで地図から消えた場所がある

  
或いは
  
みずから隠れたのだろうか

    

群れをなすものたちに
    
たどり着くための手足は既に無く
    
夢をおぼえたものたちに
    
みとめうるための瞳は既に無く

    
水たちの本能だけに護られて
    
みなもとの名は
    
もっともうつくしい廃墟のなかに溢れている



  
没してゆくさなかには
  
なにものの介入も許されない

  
終わりゆくならば純粋に
  
始まってゆくならば
  
還る先を見まごうことの無きように


  
もっともうつくしい廃墟のなかで
  
みなもとの名を水だけが忘れない


2006/09/09 (Sat)

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