詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
きれいな若者たちが
無惨な船首に触れるとき
潮騒は
永遠の座を退こうとする
これまでもこれからも
財宝は
何一つ約束を交わさない
けれどもそれは
語り継がれず
求めるこころの火種は絶えない
広げた地図と海図とを
なぞる指先も あつい視線も 食いしばる歯も
やがては
白く
風の番人となり果てる
非力なゆめをさすらいながら
誰にも解されぬうたを流し続けて
それは
永遠の憂い
或いはよろこび
輝かない月は
闇夜をしずかに汲み上げて
潮騒は
沈黙の賢者の称号に戸惑う
繰り返すことは純粋な誤り
旗のような帆のような
痛々しい布が風に揺れるそのたびに
岩場は波を打ち砕き
鏡のおもてを湿らせてゆく
終わりはつまり始まりであると云う