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千波 一也の部屋


[680] 輪郭図鑑
詩人:千波 一也 [投票][編集]


わたしは残暑と縁がない

かわりに地震とくされ縁

わたしは梅雨の対処を知らない

かわりに除雪の腕前はある


ヒグマに注意、という看板を横目に

ツキノワグマ、という名前の

風雅をおもうわたし


黄金週間の予定を立てるかたわら

桜の開花を懸念するわたし



なじみの電車は路面電車で

峠はさながら県境

真冬の零度はあたたかく

真夏は二十度あればいい

キツネにえさは与えない

ごめ、とはカモメのことである

ハマナスの棘にトラウマが

ポプラは孤高がうつくしい




知っていることを知ることで

わたしの輪郭は

かたちを為す

そう、

知らないことも同義であるけれど

響きがよろしくないから

いつもいつも

知ること、と記している

ページの増えることをよろこんで

わたしは常に図鑑を

それゆえに

あなたはあなたで

確証のない彼方まで

あなたのあなたは守られる

輪郭という名において

もちろんわたしも



霧の表情を探ってみるわたし

埠頭の風向きを嗅いでいるわたし

南ばかりを意識して以北に疎く

水際に寄りたがる傾向が強い

そんなわたしを反省しよう、と

前向きに検討中の

わたし


2006/09/16 (Sat)

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