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千波 一也の部屋


[820] 綿毛
詩人:千波 一也 [投票][編集]


綿毛に乗せた

ことばの行方を

わたしは知らない


それは

さほど深刻ではない心当たりで

暖かすぎる夏の日に

ときどきそっと

距離を置く



まっ白な

姿かたちは

どことなく汚れにおもえて

少しだけ哀しく

少しだけ大きく

背筋を伸ばす


風にはなれない午後に

逆らうでもなく

従うでもなく



不器用な戯れが

群れをなすだろう予感を

いっぱいに包んでいる


そうして

夢とよばれる境界線は

いつまでも見つからないままで

だれかの足元に

それを広げる



 口笛の似合う季節の名前を

 なんと呼ぶべきか


 涙のような海と

 海のような耳と目の

 その傍らで



自由な羽を

わたしは持たない


綿毛のなかの

わたしとちがう体温に

不思議なひとつを確かめながら

ときどきそっと

空になる


解放されない

光の果てに


2007/07/21 (Sat)

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