詩人:千波 一也 | [投票][得票][編集] |
胸は
すぐに
いっぱいになります
それゆえわたしは
多くを連れて
行けません
あなたを
はじめて呼んだ日に
こころの底から呼んだ日に
海は向こうになりました
永遠に終わらない海の
さかなにわたしはなったのです
おぼえる名前は
あなたが最後
知りゆくさなかで
強さを忘れる代わりに
守るべきものを
愛するべき弱みを
なくさずにいようと思うのです
おぼえる名前は
あなたが最後
親しみ慣れた空に
或いは季節に
吐息が
そっと
教えます
分身をそっと
教えます
あたりまえの物事に
立ち止まれない優しさも
思い出すことで息吹(いぶ)きます
優しさとして
わたしは
あなたをおぼえたさかなです
空色に、水色に、
静かに沈む
音色です
胸いっぱいに