詩人:千波 一也 | [投票][得票][編集] |
きみがまだ制服だった頃
わたしも同じく包まれる身で
あの毎日が示した未来は
いまも変わらず
ふしぎな熱です
肩掛けかばんは
いちりんの花
種という名に奔放に
駆けた時代の
証明です
信じていたものは
信じようとするこころ
互いの夢を傷つけぬよう
臆病すぎる優しさで
名も無い線路の傍らで
ちからの限りに
手を振りました
隠れそこねた涙のような
空のすきまが好きです
ときどき
わたしがまだ制服だった頃
きみも同じく教えたがりで
ようやく気がつき
うつむきました
夕日の色が
あまりに濃いと
つぶらな小石に訴えながら
明日あたり
潮騒が恋しくなりそうです
互いがまだ制服だった頃
そこに確かな年月はなく
海辺の町が窓なのです
ときを
閉じては
ひらくのです