詩人:大示 | [投票][編集] |
旅するなかで君に似た人を見かけたよ
でも本物じゃないんだ
苦しくなった
甘い苦しさだった
『忘れてしまえば楽だよ』
両手を広げ微笑んだ
あの人は君の鏡像
手を伸ばせば冷たくて 抱きしめれば破片が突き刺さる
やっぱり、君じゃない
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憶えてるよ
君との約束を
限り無く旅をしてきたけど星の数ほどの人に出会ったけれど
あの日の大切な約束は、色褪せることはなく
今もこの体の中で
柔らかい光を放っている
あと少しで会えるよ
だから、どうか
あの日のままの笑顔で
出迎えて
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全ての苦しみは
この世に堕ちた時より始まる
知らなくても良い憎しみ
刻まれる理不尽な痛み
逃れられぬ悲しみ
導く者の、愚かさに比例し苦しみは増えていく
指導者を選べぬのは何故
生まれ堕ちる世界も国も、選ぶ権利さえ与えられぬのは何故
詩人:大示 | [投票][編集] |
ザラリと石榴の紅い粒が
口の端から『ポタリ』と
あぁ、綺麗
白い君の周りにばら蒔こう
まるで上等なガーネットを敷き詰めた様
残酷な色した小さな粒
キラリと光る思惑は
誰にも気づかれないままで
詩人:大示 | [投票][編集] |
前を向いて真っ直ぐ立っていた一つの大きな花
フェンス越しに、こっそり見上げていた
早く君と同じ高さになりますように
雨に濡れて佇んでいる君は項垂れて寂しそうだった
手を伸ばし持っていた黄色い小さな傘を、どうぞ
季節の終わり
久しぶりに会いたくて
君がいるあの場所へ
憧れていた姿は無く
渡した傘に潰され・・・
頼りない小さな種達だけが遺されて
一握りの命
一粒の小さくて
なんて
なんて重い、大切な命
君の亡骸を埋めて
新しい命を埋めて
どうかまた、生まれて来てください
そしてまた、どうしようもないぐらいに憧れさせてください
誰もいなくなったフェンス越しに
夕日が沈んでいく
君も見ていたんだね
見つめ続けた憧れが消えゆき
そして、当たり前のように生まれてくる奇跡の瞬間を
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朝靄の衣を纏った竹林
葉擦れのさざ波の中で
カタリ
コトリ
と、虚しい鞘当て
言の葉は、時に鋭利な刃より深く抉る
刃など無いのに時に両刃になり己すら傷つける
空を見上げると引き際を誤った月が
そっと笑った
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泣き笑いのピエロ
くるりと回って
おどけて跳ねて
数多の笑顔と拍手に深く一礼
やっと終わったピエロの時間
夜を行き交う
無表情の人混み
その群れに
男は見事に紛れ込む
筋書き通りの舞台
愛想笑いの一日が漸く
終わる
詩人:大示 | [投票][編集] |
全てが禍々しくも美しい猩々色に染め上げられる逢魔が刻
夏の夢の死骸を集めて弔うように火を点す
暖かい火も
過ぎれば、この身は
役に立たぬ炭の塊
少なくとも炎を纏っている間は暖を求める誰かの役に立てるだろうか
見つめる先は
夏の夢の葬儀
幻想の終わりは
いつも逢魔が刻の神の社
詩人:大示 | [投票][編集] |
身体が軋むほどの
吐きそうなほどの
己以外ヘの憎しみは、真夜中に膨らんで
遠吠えが響くなか
汗ばむ身体を起こす
鏡よ
僕の中には何が居る
月よ
夢の中で僕は何をした
見ているのはお前だけ
鏡像の己
見ていたのはあなただけ
月の君
そう、あなただけ
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月の冷たく鋭利な光が
君の瞼を撫でる
そんな夜は遠い昔に鍵をかけたはずの扉が
軋んだ音をたてて君を招く
苦しげに呻く君を
不躾な執事が妖しく誘い込む
手を振り払って
そんな男に惑わされないで
君の苦しみを解ろうとしている僕にその身をゆだねて
扉の鍵は
君の代わりにかけてあげるから
親切なフリした、悪い執事は
僕が閉じ込めてあげるから