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百年草の部屋


[26] アリとキリギリス
詩人:百年草 [投票][編集]

僕はただ歌ってた。

旅立つ君に、

他に何もして

あげられないから。


君はここのところ

ずっと忙しそうだった。

旅立ちを前に、

僕はすっかり

忘れられていた。


そういえば、

童話のキリギリスも

ずっと楽器で

歌ってたらしい。

この唄が少しでも

君に届いたらいいな。


働きアリみたいな君は、

荷造りなんて

簡単に済ませて。

『準備万端』

って得意げな顔で

僕にサヨナラを

告げるんだ。

僕は精一杯の

作り笑顔で

君を見送るけど、

どうしても

悲しい唄になる。

強すぎる君へ。

弱さを見せない君へ。

僕が君に贈る

最後の唄は、

やっぱり愛の唄。

君がいつか

僕を思い出して

笑ってくれたら

もうそれだけでいいや。

童話のキリギリスは、

努力しなかった事を

悔いる役回りだから。

2010/09/12 (Sun)

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