ホーム > 詩人の部屋 > 尻尾まであんこが詰まってるたい焼きの部屋 > アパート

尻尾まであんこが詰まってるたい焼きの部屋


[556] アパート
詩人:尻尾まであんこが詰まってるたい焼き [投票][得票][編集]


夕暮れのベランダに
ふと夏の匂いを
感じて出てみれば
風もやわらかく光と戯れる

窓辺に吊るした風鈴が
奏でる 涼しげな音色

この町をあとにする
僕は片付いた部屋を見て
風鈴をしまうのを
ためらいながら泣いている

風にさらわれた麦わら帽子の
行方を気にするように
何処かになくした思い出を
振り返るけど足跡さえ見つからない

心より先に 体が大人になる
心は今も探している
指切りして 結んだ約束
また会おうねと言ったのに
僕たちはあまりに忙しすぎて
会えないまま 何度目の夏を
見送るだろう

ラムネのビー玉の取り方や
カブトムシのたくさんいる場所
僕らだけの秘密基地 

大切なものはあんなにあったのに
時の流れに忘れ去られて

アパートの四階 一番端の部屋
僕が住んでいた部屋

今は誰が住んでるんだろう
今でも陽射しは悪いかな

また会おうねと言ったから
約束は果たされなくちゃ悲しいだろう

涙に濡れた思い出を抱えたまま
夕焼け空は今日も優しく燃えている

大人になって乗ってみた
シーソーは簡単に傾いた
僕は恋の数だけ涙を流してきた
果たされない約束は
僕が大人になるための階段
そう思ってもいいかな。



2019/08/17 (Sat)

前頁] [尻尾まであんこが詰まってるたい焼きの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -