詩人:松子 | [投票][編集] |
ある日、僕は細い路地裏に、「フレンズ」って店があることを知った。
「友達にお困りの方はお試しください」
店の看板にはそう書いてある。
てんで友達のできない僕は、その扉を開けた。
金と引き換えに僕は友達を買った。
去り際、店主の老婆は僕にこう言った。
「その子を愛してやって」
初めての友達に僕は戸惑った。
「僕は君を裏切らない」
それが彼の口癖だった。
僕はそれに答えられなかった。
彼を愛さなかった。
彼は自殺した。
僕は泣いてはいなかった。
泣けなかったし、泣こうともしなかった。
数年後、僕はふとあの路地裏を通った。
どうやら店は無くなったようだが、「フレンズ」の看板だけがそこにあった。
そして僕はあることに気づいた。
そこに愛が無かったことだ。