詩人:旅人モドキ(左利き) | [投票][編集] |
どんよりした朝
やみ上がりでトンネルに入ると
車列のもたらす残響がおれを
陶酔させ未知への旅にいざなう
虫のささやきや鳥のさえずりに
ふみ鳴らすノイズは雲隠れ
のぼり坂を挟むうっそうとした森
すきとおった昼
射しこむ陽光が道標を照らす
やがて旅路はくだりへと転じる
懐かしの集落で静まるコバルト
突風のいたずらで砂浜に散る菓子
ここを好きなまま引き返す
汗ばみつつも探すデジャヴの断片
なごりおしい夕
暗がりをくぐりはかなき旅は果て
そと回りの仕事におれは猛進する
わが身をむしばむ筋肉痛と
まばたきノスタルジアの奇襲
ともに屈せず役目を全うする
帰宅してふとんの包容力に埋没
うらさびしい夜
望遠鏡でのぞく月のクレーターの様に
昨日の景色は鮮やかな高き幻となる
旅や生活が無意味でもかまわないから
余韻にひたり青写真へやき付ける
ふと疲れが癒えたかくすぐってみる足
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