あなたが去った

何も言うなと言われて

ミルクは入れない

今私を甘やかすと

泣いてしまうから

あなたの重荷になってしまうから

うんと苦い珈琲ゼリー

君と話がしたいから

毎日見てるだけなんてやだよ

君と話がしたいから

君が風邪ひかないかなって願ってる

僕のポケットにはのど飴

気が利くね なんて言われるかな

君と話がしたいから

もう二ヵ月待ってます

フライパンに
生地を流し込んで
じっと待つ

ブツブツ穴があいて
どんどんあいて
心もブツブツ穴だらけ

催眠術にかかったように見てたら
焦げた

奴は私に

煙草をやめろと言う
時間を守れと言う
人の気持ちを考えろと言う
部屋を片付けろと言う
仕事を見つけろと言う
大人になれと言う

ムカつく
全部ぐちゃぐちゃになってしまえと思った
そしたらホントにぐちゃぐちゃになってた

今になって好きだなんて気付いて馬鹿だな

全部ぐちゃぐちゃに混ざったら
めちゃうまいミックスジュース

私の事思ってくれてたんだ
ありがとう

午後７時、駅でカップルを見た
女は可愛く手を振って去った
男は淋しそうだったがすぐ早足で改札に向かった


ご縁がほしいと思った

君限定で

毎年夏になると現れる
化粧っ気なんてまるでないけど
目を奪われる程美しくて
浮気心に頭が痛くなるけど
それさえ魅力にしてみせる

それが君

毎年夏になると現れる
潮風がとてもよく似合う
誰にでも優しいけど
私にはちょっと冷たい
駆け引き上手

それが君

偶然の再会
卒業して以来だね
なんて言いながら喫茶店

「クリームソーダ！」
迷わず注文するあなたを見て
「おこちゃまだね」とからかう

いつも子供のように甘えられるあなたが羨ましかった
いつも子供のように素直なあなたが羨ましかった

意気がっていつも私は珈琲だけど
美味しいと思った事はない

今日はあなたの真似していいですか？
「私もクリームソーダ！」

ソースをつけると旨いらしい
マヨネーズをつけると旨いらしい
お湯でふやかすと旨いらしい
そのままでも勿論旨いらしい


まだまだあなたには秘められた可能性が宿る

声が聞きたいと思った
電話帳を開いてさがす

でも、やめた

重荷になりたくないから

毒々しい甘さが嫌いだったが
今は少し慰められた