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アルバトロスの部屋


[442] 空き缶
詩人:アルバトロス [投票][編集]

僕は今
悲しいのだけれど
それは瞬間を切り取っただけで
仕事には行かなくちゃいけないし
ご飯も食べなきゃいけないし
歯も磨かなきゃいけない

悲しいと思うことを
バカらしいとは思わないけれど
悲しいと思うことに
支配されるのは癪だなとは思う

別に後ろ向きでも良いじゃない
この瞬間に留まることはできないのだから
悲しい、は続かないのだから

塗装の剥げた道路を
空き缶がコロコロと転がっていく
からんからんと
寂しそうな音を立てて
誰にも見向きされずに

空き缶はどこへ行くのだろうね
秋の冷たい風に吹かれて

僕はどこへ行くのだろうね
気がつくと空き缶は見えなくなっていた

2021/11/10 (Wed)

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