ホーム > 詩人の部屋 > ライカの部屋 > ドリーマー

ライカの部屋


[23] ドリーマー
詩人:ライカ [投票][編集]

彼女は走る
希望のひかりがやっと前に灯りだして
うれしくて
先に想像する未来の自分が楽しみで
はしゃいで
吹き出して
両手を振り回し
奇声をあげて

最初の街で
身体が火照ったから
コートを捨てた
路上の住人が
いそいそ拾う
高かったんだから大事にしてよね、と思う

次の街で ショーウィンドウに映る自分を見たらあれだけ完璧な化粧が
見事に流れ落ちていた
眉なしの間抜け顔を
自分で
ププっと 笑う

最後の街でブーツを
捨てた
踵の細い 華奢なベルトの茶色いブーツ

レンガで舗装された美しい街並みに捨てたから
誰もが 迷惑そう
でも 彼女は速い
周りの声なんて
風を切る音で聴こえない
息があがる
蒸れていた素足が気持ちいい
ざまぁみなさい
この建物をぬけたら
そこは...

そこは...、
その先は崖
夢みた街は
海の彼方
まるで蜃気楼のよう

怯んで 三歩下がる
ふっと息を止める
口の端だけつりあげ
にやりと笑う

くるっと振り返り
更に二十歩さがり
海に向き直って
助走を つける

ばくんばくんと
破裂寸前の心臓
舞い上がる身体
視界いっぱい広がる



誰にも邪魔させない

そう
私が決めた


2005/10/10 (Mon)

前頁] [ライカの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -