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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1151] 僕と映画館
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


夢の中で広い映画館の一番前の座席にひとり僕は座って
僕が僕の今日を振り返るように観ている
映写機が回りながら映し出す僕の今日
失敗ばかりの喜劇のような物語
でも観ている僕は映画の中の僕だから周りの誰かが笑っても笑えはしないよ
だってこれでも精いっぱい頑張ってるんだから
他人にどう思われたって曲げることなんてできはしないほどに

繰り返しみる夢に
繰り返し流れる同じ場面に目覚めるまで
僕は涙しながらもそれでも観ていた
自棄になる僕
溜息をつく僕
いろんな僕が映ってる
夢の中なのにまるで現実の出来事ように
不思議な気持ちで僕は自分を 僕を観ている
伝わる痛みは同じ僕だから

突然にあたりが暗くなって光が見えたら
僕は瞼を開ける
現実という
今日という
朝という
場所にもどる
僕は確かに僕で
映画館などなくて
でも目尻にはかすかに涙の粒が一つ
あぁ
僕は今日も僕を演じながら
夢の中でまた今日を振り返るだろう
そしてふとした場面に涙するだろう
僕にしかわからない気持ちが伝わってくるから…
それまで僕は現実という映画の中
僕なりに演じきる。

2007/05/31 (Thu)

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