詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][得票][編集] |
"私"という存在は体中に何枚もの羽根を生やした一羽の鳥
その羽根の一枚一枚は私の残りの命を表す
その羽根は相手にも自分でも見えないから
はたしていつ詩が訪れるのか誰も知ることはできない
だがその透明な羽根の枚数によりそれぞれの残りの命の制限が定められている
それは今日という時間が終わるときに一枚ずつぬけ落ちていく
そして最期の羽根が抜け落ちたとき
すなわちそれが死なのだ
羽根はその死にゆくまでの過程にいくつもの生え変わりを繰り返す
そして羽根は年齢を重ねるほどに大きく立派なものになる
だがある程度の時期にさしかかると身体は老いていき
羽根はそれに伴って抜け落ちるのが早くなる
そして最期の羽根が抜け落ちた瞬間
その人の一生は終わりをむかえる
羽根は再び生えることはなく
だが血の通いをしなくなり白くなった身体は
まるで羽根が生えているように美しく
きれいに看取る者の視界の中で横たわる
静かに
ただ
静かに。
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