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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1325] 美しい世界
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


好きだったあの歌手のCDも押入の中で今はもう聴かなくなるくらい
あの頃から比べれば大人になった僕は趣味も考え方もおどろくほど変わった
周りに流されすぎたのか
それはわからないけど
確かに僕は悲しくなるほど変わった

でもいつになっても変わらないのは
とんでもないくらいのだらしなさ
脱ぎっぱなしのシャツが部屋のあちこちに
脱ぎ捨てられたまま
それを叱る親もいないまま
ハンガーは意味をなさずにゴミ箱行き

変わってしまうことが
とても悲しく思えて
どんなに自分がだらしなくても
だらしなくない僕なんか
自分が自分でなくなるような気がしたから

途中まで読んだ本の中にはさんだしおりは
薄汚れたまま時だけ経って
その先の続きのストーリー
読むこともないまま火曜日のゴミ出しの日に棄ててしまった

こんなだらしなく過ぎていく生活でも
僕にはかけがえのないくらい愛すべき日々だということ
取り立てて目立った出来事もないけれど
やわらかい風と陽当たりのいい西向きの部屋
立てかけられた忘れ去られた年代物の古いギター
ころんと鳴らせば懐かしい

それなりには僕なりには幸せだって感じる
特別なことは全くといってなにもない
けれど美しい世界
すごく美しい世界
とても美しい世界。

2007/08/13 (Mon)

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