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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1819] 友達の親父
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


友達の家に足を運べば
玄関先で友達の親父らしきおっかないおじさんが俺を不審がり睨みつける
だけど話してみれば見かけによらずやさしくてあったかい人だった
そりゃもうあったかい人だった
今はもうこの世にゃいない人だけど
ぜんぜん知らない人ってわけでもないから線香のひとつくらいはあげておいた
なんだか悪い気がして
あげなけりゃだめな気がしたから
友達の親父はいい人だったな
時たま 暇なときなど思い出してるどうでもいいような下らねえ記憶の1場面を 記憶の切れ端を
思い出してる
今日がちょうどその人の命日
だから線香をあげてきたんだ あげてきたんだ
友達の親父の遺影の前鐘を鳴らし手を合わせて 僕なりの思い込めた気持ちつぶやいた 心の中でちっぽけな地球がきりもなくまだ回ってるよ 回ってるよ
あんたがいなくなってからも 回ってるんだよ
それだけ伝えにきたわけじゃないが
ああ 回ってるんだよあんたがいなくなってからもいろんな出来事が世界中を騒がし代わり映えない日々の流れはそのままに 世界のことはあまり知らないがとりあえずみんな元気でいるよ
あんたの息子
つまり俺の友達のあいつも変わってないよ
ニヤニヤ笑ってさ
俺の親父でもないのになぜかあいつの無神経さに悲しくなったある日の夕方
ずっと親父の遺影の前うなだれながら念仏のようにつぶやいてた
他人様のことはえらそうなこと言えないけど言わせてな。ごくろうさま…
あんな親不孝な息子を持ってさぞやたいへんだったでしょうな
なんてつぶやいて
涙ポロリこぼれた
ああ 本音と想いもこぼれた
そしてお母さんにあいさつすまし友達の家を後にするんだ 後にするんだ。

2007/12/08 (Sat)

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