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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[2613] 表紙をとじたら
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]

蝶はその美しい羽を濡らして
もっと地球から見ても輝いているのがすぐわかるように
地球のどこにいてもいいように光を放つ
その美しい羽もやがてすべて抜け落ちるけど

さびしい気持ちで
目覚めるよりかは
清々しいような
感じで朝を迎えたい
だけれど胸の中に
残る不安が先々のことまでも映して不安をちらつかせる
考え込む僕にもどす

それでも蝶よ 僕の気持ちよ 負けないで
そんな名もない蝶の名はこれから決めるとして
さてこれからどこへ向かおうか
行き先は自由だからかえって難しいや

自分でこれからはなんでも決めなさいと母も父も素っ気なくいうんだよ この家を出たあの朝もそんなふうな言い方でわかれた
使ったつもりでもまだ余るくらいに残る金に埋もれた生活も日々もほとほと嫌気がさした

欲望の湖の水面に浮かんで
遠いような近いような距離から見下ろす月に手を伸ばす
とうぜん届くことなんてないけど
あの時ばかりは届くような気がした
夢が叶う気がしたけど予想はずれで夢の終わりを見た
あの日のように

時計は回るよ 今日も
ただきれいなだけでなんの自慢にもならない部屋で
つまらない雑誌のページをめくる僕

カチカチと時計は進み 戻らずに僕を終わりへと日々いざなう

そして 気がつけば
僕は孤独で陰気な人に落ち
うれし涙で濡らすはずの夢の羽はいつの間にか悲しみからの涙でびしょ濡れさ
まぶたをぎゅっと力強くとじたらまた歩き出せる
そう信じられた日は遠く今はもうその中腹さえ見えない
そんなわずかな希望の光にすがっていられた自分が不思議で
とてもとてもなぜだろう
とてもとてもなんでかな

そんな疑問もいつかやがて幕を下ろすみたいに
ゆっくりと それでもあっという間に終わらす
最後の日を迎えさせる
表紙を閉じる日がくれば皆同じく沈む。

2008/06/11 (Wed)

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