詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][得票][編集] |
散歩の途中の道ばたでふと見かけた花が僕に話しかけてきた
あなたの目があるから私は美しくいられるのよ
あなたの目の中で私は美しい姿に見えているから美しいままで咲いていられるのよ、と
たしかにその花は美しかったし花の言うことは合点がいくし納得できる
ゆえに僕も他人の目の中で僕という存在でいられる 逆にいえば見たくなくても目をそらしても存在をとらえてしまうから僕はあなたを視界から消すことはできない、どんなに汚く醜い人であろうとそれはたしかに存在しているから
このふたつの目はたまに余計なものも映すが美しいものをとらえるには最高の双眼鏡だと思う
逆にいえば目がなければ美しいものどころか嫌いなものさえ見えなくなるから
人は感謝すべきだ
嫌いなものが見えているからこそ美しいものが見える
それは互いに存在し合ってるからどちらかがあってどちらかがないということはない
美しさと汚さはつねに対になっているものだから
そしてふと街をでて長いトンネルを抜ければひらけた視界の中に風が吹いていた
風は私もあなたがいるからここに吹いているの、もし自分の存在を疑うのなら鏡を見てごらんなさい
耳をすませば木々も何か言っている
僕らはただ揺れてるだけ 自分の存在をたしかにするものなんてない ただ風に揺れ枯れるまで木として立ち続けるだけだ
だけれど君は違うでしょ 自分の存在をたしかにすることだって何かを美しいと思うことだってできるのだからそれはどんどんたしかめてゆくべきだよ
大事なのは自分がどうして美しいと思うのかじゃなくそれをどう美しいと思うかで
理由なんかただ突き詰めたってただ美しいから
それだけに尽きるのだから
素直に美しいものを見てそれを美しいと思ったら思ったことを言葉にするべきだ
それがいつか当たり前に素晴らしいと思える日が来たら人は答にならぬほど清く美しくなれる。
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