詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
昔よく叱られて何かあるたび来ていたこの河川敷
ここから見る夕陽が好きだった
どこよりもいちばん大きく見えるから
ふと目線を変えてみれば小さな男の子がひとりうつむいて
悲しそうに泣いていた
どうしたの?
めずらしく声をかけたら
その男の子はいつかの僕に似ていたよ
もちろん空似だよ
男の子はお父さんに叱られたんだと言った
そのとき僕の昔とその男の子の姿がシンクロしたんだ
他人にはどうでもいい話だろう 聞き流してくれよ
だけどそのときの僕の切なさは僕しか知らない深い切なさなんだ
そうさ
どうでもいい
でも僕には大切な記憶として今も思いでの中に鮮やかに残ってる
そのへんの矛盾が君と僕の違いだ
少年の流す涙は夕暮れに溶ける
にじんだ淡いオレンジがほら君を包む
胸が熱い 熱いんだ
どうしたらいいのかわからない
君もそうなのかい?
返事はないけど
男の子の目はそうだと言ってた
そして男の子はとたん笑って空気に溶けて消えた…
幻が見せていた幼いころの僕が手を振って消えた
あれはやっぱり僕だったんだね
あまりに思い出を懐かしく思いすぎて神様が僕にくれた幻なんだね
だけど幻なんだね
夕陽が見せた幻
きれいすぎて
わかりすぎて
僕も涙を流した
あの日と同じあたたかくてやさしい色をした涙を
そんなストーリーのほんの1ページ
いつまでも
おぼえていたいな
悲しかったけど
またそこが僕の成長記録
忘れたくないあの夕陽とあの空の色
今も胸の中で僕に笑いかけて思い出すたび僕と踊ってくれる。
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