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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[3588] からっぽの空
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


夢も情も金も名誉も宛もなにもない
ここにはただむなしい風が吹いているだけ
形あるもの形なきものもすべて嘘のように過去を偽る
名もない花なら一輪咲いていたけど涙を忘れた瞬間に砂となって崩れた
風車がむなしく永遠をのせて回り続ける
きれいな昔をそこに描きながら胸の中でいまだ輝く記憶を絶望に重ねてなんとか命をつなぐ
明日も明後日もずっとこのからっぽの空を眺めながら
低い声をもらし飛べない鳥のように僕は傷つきすぎた翼をぺろりと舐めてる

目を開けて閉じて
ただそれだけを繰り返して今日も当たり前のように昇る朝陽に頭を垂れる
おはよう つぶやく声
あれだけ苦しめられたむなしさもまるで消えたよう
つかの間の光の中で僕は笑ってる
そのはるか真上にはからっぽの空
それをさえぎるように青空の屋根
ほら青空が雨で汚されればまた泣き出すんだろう きりがないなあ
サーカスのピエロのように笑っているだけでみんなに好かれるなら涙も隠すよ
でもたまには泣きたいよ
僕はそんな矛盾した気持ちを抱えたまま今日もからっぽの空の下 グチや文句を並べながら悲しみのつめたい雨がやむ時を期待して待つ
僕は気長に待つ
からっぽの世界の中
そこには何もないようで確かに存在している
そんな不思議な幻にだまされながら生きる
何かを欲しながら
何かを拒絶しながら
何かを嘆きながら
からっぽの心の中に涙のしずくを落とす
ポチャリ しずくが落ちる
そんなふうにみんな生きる
僕だけじゃないから…
それだけでがまんできたらいいけれど
そんなに僕ら人間は簡単じゃない
決まりきった理屈と僕の中にある絶対的な何かが絡まる
こたえは闇の中
霧が深すぎて見えない
見上げても見下ろしてもからっぽの空が僕を閉じこめるだけ
続いていく日常がそこにあるだけ
イヤならどうぞ安らかな死を そう脅すだけ。

2009/01/26 (Mon)

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