詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
あの日 君に恋をした あれは春のはじめ桜の見頃あたり
めぐり会った瞬間僕は君のとりこになった 人生はじめての恋だった
人は恋をすると肉体的にはわからない痛みを感じるというけど
心の中が熱く燃えるような無痛の痛みを感じるというけど
あのときの僕はまさにそれだった
花びらのような散り方で終わるような恋はしたくない
はじめてでもそれくらいは思うから僕はいつか伝えたいとも思う
せめて桜が咲いてるうちに伝えたいと思う
ボタンを上まできっちり閉めた学ランと真新しいズボンを着た僕はまだ少し肌寒い春風に吹かれながらぼんやり空を眺めてた
思うことはあの雲クジラににてるとかあっちはソフトクリームだとかいう幼稚なこと
そんな恋に未来はあるのか
あの日の僕はそんなことどうでも良さそうだった
ただ君を見てるだけで それだけで
でも恋のほろ苦い後味はあとになって響くから大人になったら後悔するということもわからず僕は気の迷いと恋心を窓からそまつに捨てた
でも今 わかることは恋は叶わなくても叶ってもそんな気持ちを抱くだけでもいいものってこと
良くも悪くもなくとえらそうに僕は言うけどあの痛みはきっと大人に近づいたあかしで成長の課程になるものだと知る
初恋は初恋でいい思い出と笑う 言っていたらどうなってたかという結果なんか知らないけど
僕は思いのほかとてもすがすがしい
ひとり 十数年後の春風に吹かれてる
何百年と立ち続ける桜の木の下で想いを馳せる
君は元気かな
名前すら知らない
ただ良いなって遠くからいつも眺めてた僕よりひとつ年上の女の子
恋桜 恋をした人の心に咲く桜
今もこの胸に
また新しい種を宿すまで眠りの中 土のベッドの上
恋をする日を待ってる
今か今かと春を待ってるつぼみみたいに恋は心に春がくるのを待ちわびてる
春になっても待ちわびてる。
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