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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[875] 眼差し
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


夕方間近の街はもう寝静まったように
息を押し殺して人波だけが絶えずあふれていた
昼間の街とは思えないほど不気味なくらい静かだ

夕闇がもう迫ってきている
遠くで工場の白い煙が空高くまで立ち上っている
靴のつま先でタバコをもみ消した
もうすっかり暗くなってしまった街
小さな灯りが儚げに揺れた
吹き抜ける風は僕の知らない世界の出来事を
涙を 笑顔を 幸せをそっと独り言を言うようにささやいてる

愛する誰かに向ける眼差し
憎んでる誰かに向ける眼差し
自分と向き合うときの眼差し

僕は偽りも裏切りにも瞳を向けてきた
憎しみを知り
そして愛を知り
君という人の温もりを知った
このカラダで
この鼻で 口で 耳で
僕のすべてで
君を愛した
そして僕は愛する意味をはき違えて
君の命を摘み取ってしまった
気づけば
真っ赤な花がそこに横たわって
僕は… 僕は…
目が覚めたように君を抱きしめ
泣き叫んだ
己の過ちを嘆き
そして悲しんだ。

2007/04/04 (Wed)

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