詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
心の中のおもちゃ箱を残らず全部ぶちまけて
大切な大切な記憶だけを残して後は全部廃棄処分
記憶から抹消するんだ
悲しみも憎しみも
全部全部
残らず棄てちまおう
月明かりが部屋に差し込む
その瞬間
木の椅子に座らせていた
戯れで作った不細工な表情(かお)の
マリオネットが話しかけてきた
……それで良いのか…?
…本当にそれで良いのか……?
マリオネットはくり返す
そのたびそのたび
マリオネットの口がパクパクと開いたり閉じたりする
僕は言った
あぁそれで良いんだ
後悔はしてない
大丈夫これで良いんだ
僕もくり返す
マリオネットは
暗闇の中
瞳に光るものをため込んで
ひとしきり涙していた
同じ様に
"彼"も孤独だったから
僕の傷みや哀しみが解るんだろう
そう思って僕は
心の部屋を出
瞼を開けた
そこにはただ
いつもの退屈で理不尽な現実があるだけだった
これが
僕が自分で望んだ
結果なのだろう
止める心の中の自分さえも押し切って
僕が自分で選んだ
応えなのだろう
僕は一人
いや独り
深く深く
息を吸い吐き出した。
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