詩人:あいく | [投票][編集] |
悪魔が現れたのは私が二十歳の誕生日
「大人になった君にプレゼントだ」
悪魔は二つのボタンのついた機械を手渡してくれた
「一つのボタンを押せばそれまでの人生が記録される
もう一つを押せば記録した時まで人生を戻せる」
なるほど昔やったファミコンのセーブとロードの要領か
「でも記録出来るのは一度っきりだ
それでも十分だろ?人間は過ちを繰り返すものさ
使う価値はあるだろうよ」
悪魔はニヤリと笑って姿を消した
そして機械が手元にある
ファミコンで要領は知っている
セーブは早めにだ
と記録ボタンを押しておいた
それから十年は順風満帆の人生を送り
機械を使うことも無かったが
とある仕事のミスで人生は一変
どん底に落ち込んだ
そして私は溜息と共に機械を見つめていた
こいつで人生をあの時に戻せば
とボタンに指をかけたその時
あの時の悪魔の言葉が思い出された
「。。。人間は過ちを繰り返すものさ。。。」
繰り返すのだろうか?
これまでの人生を
そして過ちを。。。
戻ったところで同じ自分でしかない!!
寸でボタンを押さずにすんだ
危うく悪魔に騙され
時間に閉じこめられるところだった
なるほど人間は過ちを繰り返すものだ
しかし人間はいつかそれを覚え成長する
時を戻すことに意味はない
時を積み重ねればこそだ!!
私は機械を手放した
背中に舌打ちする音を聞いたのは
気のせいだったのだろうか。。。