詩人:あいく | [投票][編集] |
時期で無いのは
承知していたし
ただ戯れであり
芽も出ないだろうと
其の種を蒔いた
ある日ふと気づくと
其の種は
芽を吹いていた
是も時の戯れか
こんな季節に
育つ筈も無い
そう思いつつも
また戯れ序でに
水を与え続けた
まるで期待が無いなら
まさに其れは期待を
大いに裏切った
其れはか細くも
その丈天を目指して
伸びていった
よしんば花をつけても
特にそれを喜ぶ私でも
なかろうにと
半ば自嘲しながらも
もう訳のわからない
思いのままに
水を与え続けていた
やがて其れは
思いがけず花をつけた
勿論時期はずれに
綺麗な花など咲きはしない
只その頂点に辛うじて
花であろうと判る
小さなみすぼらしいもの
花が一つ付いただけだった
どうして どうして
お前はこんなみすぼらしい
花を一つ咲かせるために
芽など出してきたのだ
罵りの言葉を
其れに浴びせながら
裏腹な心がもどかしかった
何事も全てが戯れだった
その筈だったでは無いか
なのに其れに湧く私の
この思いはどこから来るのだ
私はせめて其れを
誉めてやればよいのか
それとも其れに
詫びねばならないのか
問うて返事のある
筈もなかろうが
其れは小さな花を
風に弱々しく揺らしながら
ただ私は花だからと
答えている様だった。。。