詩人:アル | [投票][編集] |
傷は
外気に触れてる方が
乾き易く治りも早い
恥は
天日で乾した方が
後学の糧にもなる
飛ぶ鳥は
後を濁して羽音が残す
波打つ余韻
水温の冷たさ
かこちながら
足ることを知らずに
次から次へと渡り歩く
逆風に喰らう
往復ビンタ
楽園楽土は
足もと以外の何処にもない
達観したつもりの
薄く平たい風見鶏
自らは翔び方を知らない
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あいがとう
たった
一つしかないから
細切れにするしかなくて
目には
見えなくなっちゃうけど
微粒子がきっと
あなたに溶ける
晴れたら見上げてね
吹いたら笑って下さい
降ったら少し泣いてね
瞬いたら祈って下さい
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要らない物は
与えられ
失いたくない物は
奪われる
しかし
60数億分の1の
わたしを見放すほど
天は暇を
持て余してはいない
とすれば
どんな困難も
試練とは呼ばない
必要な物ならば
望みを絶やさず
要らないものには
一瞥も与えない
曇天は憂鬱
雨天に引き籠もる
晴天には軽く弾む心
序・破・急の
シナリオで
曇って降って晴れ舞台
起・承・転・結の
4つの巡る季節は
わたしという天然の中に
厳然としてある
天と人とは
上下別物ではなく
内外の曖昧な境界を
観自在に往来する
結跏オーライ
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「お母さんが
今日は
がんばってくれた」
電話の向こうの声は
スキップするように
弾んでいた。
はしゃいでいられる様な
楽観できる状況では
なかったはずなのに
あの時のきみは
確かに幸せそうだった。
「これから
お母さんとふたりで
焼き肉食べに行くんだ」
「そっか、いいな
オレも行きたいよ」
「来れんなら来てみろよ」
きみがスゴんだ。
きみがいなくなった後
1週間くらい経って
携帯にかかってきた
ナンバー表示を見て
鳥肌が立った。
電話の声を聞いて
更に心臓を
鷲掴みにされた様に
気が動転した。
一瞬
きみだと思った。
電話なんて
できるはずないのに。
電話の声は
きみのお母さんだった。
自分でも
可笑しなくらい
涙が溢れて
止まらなかった。
あの時のきみは
確かに幸せそうだった。
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たった1人でも
読んでくれる人が
いるなら
書き続けていられる
たった1人でも
心配してくれる人が
いるなら
この先も生きていける
誰かの
そんな1人になれたら
ぼくが
ここにいることに
少しは
意味があるんだろう
自分一人で
生きてきたつもり
だったのに
まわりに
支えられてきたことに
今頃気づくなんて
どうせ何もできないから
とか自分に言い訳して
逃げていたのかも
知れない
忘れないで
ずっと見ているから
そんな眼差しが
力になり得ることを
もう一度信じようと思う
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おもちゃを貰った
こどものように
今は夢中だけど
直ぐに飽きるのは
目に見えてる
最初から
全力で走れば
息が続かないのは
当たり前
美味しいお酒には
発酵する時間が要る
耳や目から入って
直ぐに
口から出るものには
実がない
たぶん酔ってる
お酒かきみに
好きだよ
だから言葉にはしない
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個として徳を積み
矩を超ゆる者に
自らをして恥ずかしめよ
同じ土俵に登るは
自らを下臈下衆に
貶める愚策なりと心得よ
争いは憎悪を産み
和めば慈愛を育む
ゆえに握った拳は開けよ
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走ってきみに
逢いに行かない
有酸素運動の
このドキドキを
自律神経が
勘違いするから
恋は内向き
愛は外向き
こんな情念の風は
どっちの方角に向かって
吹けばいいんだろう
海も陸も
暖まったり冷え込んだり
泣いても凪いでも
綱引きは止めない
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ふたりで
とりとめなく
お喋りをしている時、
「私のこと好き?」
と中宮定子がふと
お尋ねになる。
清少納言が
「当たり前です、
何故そんな…」
と言いかけた時、
控えの間で、
他の女房が大きな音で
クシャミをした。
「あな、心憂。
空言を言ふなりけり。
よし、よし」
と仰って
定子は奥の間へと
入ってしまわれた。
たぶん、真顔で
聞いてしまった自分に
照れたのかも知れない。
好きに決まってる。
嫌いなわけない。
にしても、誰だ?
クシャミなんて
不粋なことするヤツは。
しかも
タイミング悪すぎ。
空気読めないにも
程がある。
おそらく当時、
定子は二十歳くらい、
清少納言は三十路を
過ぎたあたり。
主従という立場や
年齢の垣根を超えた
女同士の友情が
そこにはあった。
それから
5年足らずで
定子のお父さんの
道隆が亡くなり
彼女に変わって
おじさんの道長を
後ろ楯にした
従妹の彰子に
中宮の座を奪われる。
そして定子自身も
失意のうちに
25年の生涯を閉じた。
あとに残された
清少納言は
自分が
一番好きだった人の
栄華と没落を
知り尽くした上で
敢えて暗さを
微塵も表に出すことなく
軽いタッチで
枕草子を描き上げた。
われ、きみをば思ふ。
あっぱれ、
清原さん。
下の名前も
知らないけど、
1000年の時空を超えて
ぼくはあなたが
大好きです。