詩人:アル | [投票][編集] |
3:00a.m.
そこだけ
不夜城のように
煌々と明るい
コンビニの店内。
中を覗くとレジ前に
客がふたり。
入店して
カゴを手に取り右回りに
店内奥へと足を運んで
様子を伺った。
やっぱり変だ
ふたりとも
カラスのように黒い
ダウンジャケットを着て
1人はフードを頭から
すっぽり被っている。
もう1人は
ロング&ストレートの
黒髪の「女」で、
小柄で華奢だが、
黒く長過ぎる髪に
何となく生気がない。
どこか不自然なカップル。
そんな気がした。
赤と白のワインを
買い物カゴに入れた時
「金を出せ!」という
低く押し殺した男の声が
レジカウンターの方から
聞こえた。
あぁ、やっぱり。
店内でフードを
被ったまんまなんて
おかしいと思ったんだ。
不思議なくらい
落ち着いていた。
カゴを床に置き
ワインを一本
逆手に持って
ふたりに背後から
近づいた。
「動くな!」
女役が振り返り叫んだ。
やっぱオトコかよ
構わず距離を縮めると
ナイフを持った
フード男もこちらに
殺気立った顔を向けた。
ナイフのブレードに
サソリのマークが見えた。
柘植の
サバイバルナイフらしい。
刃渡り15センチはある。
さらに間を詰めると
いきなりフード男が
ナイフを突き出してきた。
咄嗟にワインボトルで
それを払い落として
相手の左膝の皿を狙って
右足の側刀で斜め下に
蹴り込んだ。
グァキッ!と
鈍い音がすると同時に
男が悲鳴をあげたが
構わず相手の右手を掴み
反転して腕を決めたまま
背中合わせになると
体を預け体重をかけた。
相手の伸び切った腕は
抵抗して倒れなければ
関節から折れる。
堪らず相手はフロアに
崩れ落ちた。
床に落ちていたナイフを
女役が
拾いに動いた背中を
蹴飛ばすと相手は
ナイフを通り越して
数メートル先の床に
カエルのように転がった。
ナイフを拾いあげながら
警察が来る前に
立ち去らなければと
思った。
「あとは宜しく」
とか言いながら。
(たぶん続く)