詩人:蒼月瑛 | [投票][編集] |
「ごめんなさい」
もうこの言葉だけは聞きたくない
確かに最初はムカついて
あいつは何やっても駄目だから
つい「頼んだ俺が悪かった」そうキツイ言葉を突き付けた
自分でも、言い過ぎたって思ったさ
だから「あのことは許すから、もう気にすんな」ちゃんと出来るだけ優しく言った。
あいつの澱んだ目を見ながら。結局あいつは、悲しそうにうつ向きながら笑っていた。
それから、しばらく何事もなく生活していた。
でもある日、俺は気づいた
誰かが見ている
俺のことを遠くからじっと息を殺しながら、ずっと。のしのしと。
そこにいたのは、光を失って死んだようなあいつの目だった
あいつはいつも悲しそうな顔をしている。
そういえば、あいつの嬉しそうな顔を見たことがない。
いつも悲しい笑顔を作る。 笑い方を知らないのかも知れない。
それから毎日視線を感じる。
あいつはただ俺に視線を送っているだけなのに俺はどうしてこんなに怯えているのだ。
あいつには威圧感の片鱗すらないだろう。
なのに何でこんなに震えるんだ。
その時に
「ごめんなさい」
はっきり聞こえた。
まわりには誰もいないはず。
「ごめんなさい」
もう一度さっきよりはっきりと聞こえた。