詩人:禊 | [投票][得票][編集] |
明日、私のまちへ帰る
横では幸せそうな寝息をたてて眠る、その人がいる
しばらくその横顔も見ることはないだろう
明日から日常に戻って 夜は一人で眠るのだ
私のまちは 生まれてからこの年まで育っただけに
私にとって この上ない場所なのだが
今夜だけは この冷めた都会が私の居場所だと思いたい
雪よ、今日だけと言わず
明日も明後日も
私のまちまでの道を閉ざしてくれないか
その横顔が見れるならどんな理由だっていいのだけれど
寝床に入ってからどれくらいの時間が過ぎただろう
未だ眠れず 豆電球を見つめていたら
自然と私は泣いていた
涙は一滴二滴、最後には流れるように出て
その人を起こさぬように
声を押し殺して泣いた
今この時が悲しくて泣いているのか
嬉しくて泣いているのか
私には分からない
そして、その人を起こさないようにしているにもかかわらず
心中は泣いている事を気にかけてもらいたいらしい
酒と煙草は一人前のくせに
まだまだ私は餓鬼から成長していないようだ
まぁ完璧な人間なんている訳がないし、と
自分を嘲笑いながら
その人の寝息を子守歌にして
そろそろ私も眠るとしよう