陽炎のように茫々と釈然としない有様はまさにそれそのものだ。それが何であるのかなど知ったことではない。僕は只ふとそう思っただけだ。夢を夢とも知らず、他人の詭弁に誑かされ、偽りの愛を受け取った。何もせずともやってくる。準備を待ってくれやしない。準備したところでそれを無力だったけど。一気呵成に言いたい事をずけずけと言ってやったがそれは何の反応もしない。いきなり駆け出し空をあがめた。この怪奇をどう受け取るか。時間が無かったのだと無意識に言う。
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